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「自分でいけばよかったのに」
そういって私のハチマキを差し出す。
ん、何で異様にキレイにたたまれてるんだろ…
結局勇気が出せなかったチキンな私は同じクラスの応援団、常盤ユキにハチマキを託した。
「知らない相手じゃないんだからさぁ、先輩も笑ってたよ」
そう、今年の応援団長は実のところ、小学校からの知り合いだったりする。
家がそこそこ近い。
だから私が一方的に知っているわけではなく、向こうも私のことを知っている。
※ ※ ※
「せーんぱい!これもお願いしますね」
にっこり笑ってユキがハチマキを差し出す。すでに彼の手元にはたくさんのハチマキがある。
それをみつつ、見なかったふりだ。
「常盤さ、朝ももってこなかったっけ」
そういいつつ、手を伸ばしてくれるあたりがさすがだ。
まだ体育祭は始まっていないというのにすでに疲れたような表情で手を振っている。
書きすぎて手が疲れたのだろうけど。
手元にあるハチマキと、今受け取った一本を見比べ、先に済ませてしまうことにしたらしく、ハチマキを広げスペースを探す。
そして、その視線が一点で止まった。
「常盤。“リイコ”って五月宮莉依子か?」
いわれて記憶を洗う。確かにハチマキには“リイコ”としかかかれていなかったはずだ。珍しい名前だからぴんと来たのだろうか。
「そうですよ、今クラス一緒ですし」
「ってか、あいつ普通に自分で持ってこればいいのに、何遠慮してんだ」
呆れたような声はすこし優しさをにじませていた。