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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

七人の変質者

作者: あいきい
掲載日:2026/10/21

 その牧場には、イベントになると牛が一頭増える。たまに、地域住民との交流も兼ねて、牛の乳搾りの会を開くのだ。近隣から老若男女、大勢集まって来る。牧場主の娘は、当日の会場、牛小屋の戸を開けるたびに首をひねっていた。「..変だなあ」牛は全部で十二頭のはずだった。ところが、時々十三頭いる。しかも十三頭目は、おかしなことに二本足で立ち上がったりする。最初は病気かと思った。次には幽霊かと思った。そして三度目に見た時、娘はようやく確信した。「人間だ..」牛の着ぐるみを着た人間が、イベント会場で乳絞りを、『させる側』として参加していたのである。


物陰からじっと見ていると、何と自分の陰茎を、牛の乳に見せかけて、他人にしごかせているのだ。娘は信じられないという体で、それを眺めていた。「あふっ、くふっ、ひぃっ」しごかれて気持ち良すぎて喘いでいる。それにしても、何という精巧に出来た着ぐるみだろう。毎日牛の世話をしている私ですら、良く見なければ分からないレベルだ。普段から牛に接しない人間には、見分けるのは到底無理だ。そしてその男の快感が絶頂に達した。「イクッッ!!」聞き取りにくい程の小さな声だが、確かに聞こえた。他の人と談笑しながら乳絞りをしている客には、届かなかったに違いない。そしてその男は絶頂した。グピュッグピュッ。とんでもない量だ。余程気持ち良かったのであろう。満足したその牛は、何気なくその場から立ち去ろうとしていた。


「待て!」と叫ぶと、牛は走った。だが、当然本物の牛より明らかに遅かった。「待てぇ!」娘が追いかける。牛は柵にぶつかった。やむなく二本足で立ち上がり、足を上げて越えようとしたが、短足なので引っかかって、頭から落ちた。娘はその場で捕まえた。

「アナタ、何をしていたの!?」「..牛です」「嘘つき!」「モ~」「どう見ても人間でしょ!?」「..では、牛の心を持った人間というのは?」「帰れ!」男は逃げて行った。これが、後に『七人の変質者』と呼ばれる男たちの一人、太郎との出会いだった。もっとも、この時点では娘も、まさかこの男が自分の牧場を救うことになるとは夢にも思っていなかった。


その牧場は、町の外れにあった。大きな牧草地。古い牛舎。小さな売店。休日には、町の家族連れが訪れ、牛を眺めたり、乳絞りを体験したり、野菜を買ったりする。都会から来た子供たちが、『牛、大きい!』『臭い!』『でも可愛い!』と騒ぐ。娘は、それを見ながら笑っていた。牧場は豊かではなかった。しかし、潰れる程でもなかった。少なくとも、あの男たちがやって来るまでは。

ある日の夕方。娘は一人の男に呼び止められた。「娘さん。ちょっといいですか?」「はい?」「..実は我々、この土地に凄く興味がありまして、売ってはもらえないでしょうか?」「何ですって!?」「かなりの良い値で売れますよ?」「だ、駄目よ、ここはお母さんと、お父さんとの思い出の場所なんだから」男はフッと笑った。「ここ一帯を再開発するんです。ホテル、商業施設、駐車場。それから高級住宅地もできます」「そんなもの、私には必要ないわ!」「ここが賑わえば、ご両親も喜んでくれますよ?」男は名刺を差し出した。地上げ会社の社長だった。「考えておいて下さいね?」「もし私が断ったとしたら..?」「..そのうち、売却したくなる事情ができるかもしれませんね?」と薄気味悪い顔で笑い、その男は去って行った。


 その翌日から、牧場の周辺で奇妙なことが起き始めた。水道管が壊れた。道路に釘が落ちていた。牧場に出入りする業者が突然契約を断った。夜になると、知らない車が農場の周囲をゆっくり走った。娘は警察に相談した。だが、『証拠がないですね』と言われた。娘は一人で牛舎に座り込んだ。「怖い..。もう耐えられない。売るしかないのかな。この農場も、もう終わりかもしれないね、お父さん、お母さん..」


 その声を聞いていた男がいた。牛の着ぐるみを着た太郎である。彼は牛舎の裏に隠れていたのだ。なぜ隠れていたのか?本人にもよく分からなかった。辺りを伺っていたら、怪しげな男たちがうろうろしていたので、不審に思っていたのだ。この牧場がなくなると困る。太郎にとって、この牧場は特別だった。ここでなら、誰にも邪魔されずに牛の姿になって、ミルク絞りをさせてもらえる。他の農場では屈強な男たちがいて危ないのだ。以前も射精寸前で寸止めをくらって、泣く泣く離れた場所で、自慰行為で冷えかけた自身のコックをしごいたものだ。


 太郎は考えた。『..守らなければ』そして町へ向かった。最初に訪れたのは、牛乳販売店だった。そこにいたのは二郎という男だった。二郎には妙な趣味があった。基本的には、自分と同じで、乳搾り会で他人に自身の性器をしごかせるのが趣味である。が何と、この二郎は男性にしごかせるのが趣味なのである。何でも、以前に女性にしごいてもらおうとしたが、手違いでマッチョな男性にしこがれてしまって、その背徳感からやみつきなり、その道にハマってしまったらしい。太郎は二郎に事情を説明した。「牧場がなくなる」「それは困る」「一緒に守ってくれないか」「分かった」二郎はうなずいた。


 次に向かったのは肉屋だった。そこには三郎がいた。三郎は、さらに特異な性癖の持ち主で、何と動物に自身の性器を舐めさせるのが趣味の男である。これは以前、同様に性器をしごかせようとしたら、その日は運悪く誰も来なかったため帰ろうとした矢先、そばにいた犬が性器をソーセージか何かと勘違いしてペロペロと舐め始めたのだ。驚いた三郎だが、金縛りのようになってしまい、そのまま動けなくなり、何と朝までに数十回も絶頂させられてしまったのだ。今では『獣姦』のとりことなり、近所の動物公園に通っては、『次はどの動物にしようかな』と物色をする日々が続いている。「..農場がなくなるんだ」「それは困る」「来てくれるか?」「もちろん」こちらも二つ返事であった。


四人目は近親相姦フェチであった。これは、自分の親族を乳絞り会に招待し、そこで牛に扮して性器をしごかせるらしい。以前は『いや~、やっぱ母親の手コキって最高!』などと言っていた。太郎が事情を話すと、四郎は静かに言った。「牧場を守るためなら、何だってやる」「本当か?」「ああ」「何ができる?」「母親で勃起できる」「それだけ?」「それだけだ」しかし太郎は連れていった。


五人目は五郎。五郎は糞便マニア、つまり『スカトロ』である。人間の糞便プレイを続けていたが飽きてきて、ついには動物のウンチにまで手を出したのである。そのため、最もポピュラーな『うしのふん』から造詣を深めようとしたのである。今では犬、猫、猿、鶏、山羊、そして、牛。ちょっと味わっただけで、見分けられるらしい。当人も『ウンチソムリエ』と呼んで欲しいと言っていた。太郎が感心した。「これなら敵に糞便を投げつけたりする時に役に立つな」「そういう使い方は良くない」五郎は言った。「なぜだ?」「糞便を投げるのは、糞便への冒涜だ」「何を言っているのか分からない」


六人目は六郎。彼は生粋の『オナニスト』だ。それがどんなオカズであっても、必ず射精まで持っていけると豪語している。それが例え、『ドラミちゃん』であっても。最近では普通のネタではイキにくくなってきたらしく、より高度なズリネタである動物系にチャレンジをしてるのこと。もし農場がなくなれば、彼のチャレンジの場所もなくなる。「戦うのか?」六郎が聞いた。「そうだ」「相手は地上げ屋だぞ」「問題ない」


最後の一人は七郎だった。彼だけは普通の男に見えた。太郎は安心した。「ようやくまともな人間だ」七郎は言った。「俺はまあ至って普通だ」「そうだろうな」「趣味もない」「素晴らしい」「ただし、牛が大好きで仕方ない」「なる程、焼肉好きか、まあ俺もだ」「違う」「ん?」「牛そのものを恋愛対象として愛している」「....」今までで一番ヤバイ奴じゃないか?太郎は頭を抱えた。「お前も相当な変人だ」「そうか?」「そうだ」「まあこれで七人揃ったな」


七人は農場に戻った。娘は驚いた。「な、何ですか、アナタ方は..」全員牛の姿だ。色に違いはあるが。明らかに普通ではないオーラを纏っている。「この人たちが牧場を守る」太郎が言った。驚いた娘はいぶかしんで、「ま、守るって、どうして?なぜ力を貸してくれるの?」「それにアナタたちに何ができるのですか..?」娘が訪ねた。しばらくみんな黙っていたが、やがて二郎が言った。「私は同じ男性に目がなくて..」と今付き合っているヒゲもじゃの男性の写真を見せてニャッと笑った。三郎は、「俺は動物フェチでな。今度はアルマジロとアノ行為をしようと思っとる」と薄ら笑いを浮かべた。四郎は、「近親最高!最近は、いとこ、はとこに凝っていてな?」とVサインをした。五郎は、「いやいや、そんなものより、時代はウンコよ。カラッと衣を付けて油で揚げれば、外はサクサク、中はジューシー。まったりとしていて、それでいてしつこくない!ご飯何杯でもいけるで?歯に詰まったウンチはデンタルフロスで取るんじゃよ?」とトンでもない事を言った。六郎は、「みんなまだまだだね。オナニーこそ最高。僕はいつか死ぬ時は、テクノブレイクで逝くのが夢さ」と語った。最後に七郎。この人はまともそうに見えたが、「ううっ、最近まで付き合っていた、牛のモー子、何でモー吉と浮気なんかを...、くぅっ、」などと言っているのを見て、娘は青ざめた。「...頭が痛くなってきました。もう勝手にして下さい」と言って、フラフラとどこかへ行ってしまった。

 

七人は、下調べのために牧場を調べた。地形。道路。柵。牛舎。倉庫。売店。裏山。そして牧場を訪れる客の流れ。太郎は言った。「ここは城じゃない」「だな」「だから城にする」柵を強化した。古い倉庫を片付けた。道路を塞がれないように別の出入口を作った。牧場の周囲に監視場所を作った。二郎はひげもじゃの男の写真を眺めている。三郎は近くを通りかかった猫をくどいている。四郎は「姉妹サイコー」などと一人でつぶやいている。五郎はそばにあった、うしのふんの臭いを嗅いでいる。六郎は木の陰で、自慰行為にふけっている。七郎は牛舎にいる牛たちに求愛活動をしていた。彼らの行動が何の役に立つのかは、自分たちにも分からないであろう。それでも、七人は少しずつ牧場を要塞へ変えていった。


地上げ屋も黙ってはいなかった。ある夜、数台の車が牧場の前に止まった。屈強な男たちが降りて来る。「娘さん。最後の話し合いです」娘は出て来た。「帰ってちょうだい!」「..そうですか。それが返事なのですね」地上げ屋は周囲を見た。「こんな古い牧場、守ってどうするんです?」「古くても、私の牧場なのよ」「明日の朝までに返事をください」「嫌です!」首をやれやれと振りながら、その日は男たちは帰って行こうとした。


しかし、その夜。牧場の周囲に人影が現れた。七人は待っていた。最初に動いたのは三郎だった。くどき落とした猫が情報をくれたのだ。「敵が来た」「うむ」「ではやるか」帰ろうとしていた地上げ屋の前に立ち塞がった。「..何だ、こいつら?」太郎が叫んだ。「ここは牛たちの土地だ!」「何を言っている!?」「出て行け!」二郎が突然、屈強な男に抱きついた。「あら~ん、カッコいい男、以前に付き合っていたイワンにそっくり!」そう言ってキスをしようとした。「うわあああっ」そう言ってその男はもんどりうって倒れた。隣にいた男は、面をくらって立ち往生していたら、地面のヌルヌルしたものに足を滑らせ転倒した。「ぐはっ」そのまま頭から落ちた。地面には柔らかい牛の糞が敷き詰めてあった。焦る地上げ屋。「な、何ですか?一体どういうつもりで..」すると暗がりから突然数頭の牛が飛び出して来た。「くっっ!!」動揺した地上げ屋は、「今日はここまでです。皆さん引き上げです!」と言って、そそくさと帰って行った。その後から七郎が出てきて、「ああ~、なぜ逃げるんだい?マイハニー、君こそ俺の最高のパートナーだろ、モー美さん!?」などと言っていた。くどき落とそうとしたが、失敗して逃げられたらしい。「何とか撃退したな」「ああ、だが安心するのはまだ早そうだ」


連中は翌日も来た。その翌日も来た。七人は何度も追い返した。戦いは激しくなっていった。そして最後の日が来た。地上げ屋は、別の支局の連中も引き連れ、大勢で押し掛けて来た。「今日で終わりにしましょう」地上げ屋の男が言った。牧場には七人しかいない。娘もいた。しかし、逃げなかった。太郎が言った。「俺たちはあまり言いたくはないが、変質者だ」五郎が言った。「うむ、だから失うものが少ない」六郎が言った。「あるとしたらこの牧場か。だからこの場所だけは失いたくない」四郎も頷いていた。三郎は恋人の猫を胸に抱いていた。「牛たちが怖がっている」二郎はひげもじゃの男の写真を握りしめた。「じゃあ、守ろう」七郎が走り出した。それが合図だった。七人が一斉に動いた。

 それぞれが、牛のコスプレで自身の性器を女性に絞らせたがる男。男性に絞らせたがる男。動物に絞らせたがる男。親戚に絞らせたがる男。ウンチをこよなく愛する男。自慰行為をひたすら続ける男。そして将来は、牛と結婚するのが夢である男。牧場の中を、七人が縦横無尽に駆け回った。地上げ屋たちは混乱した。「何なんだ、こいつら!?」「分からん!」「誰か止めてくれ!」「牛が来たぞ!」「猫もいる!」「羊までいる!」牧場中が大混乱になった。最後には地上げ屋自身が、何故か牛の着ぐるみを着せられていた。「何で私がこんなものを!?」

「ここだ、リーダーはこの俺だ!」と太郎は、その地上げ屋の後ろで、さも当人が叫んでいるように言った。「そこかあ!!」屈強な男たちが突進してきて、地上げ屋をもみくちゃにした。「こっ、こら!私だ、やめっ..」暗がりで、よく見えないために混乱している。その隙に、他の屈強な男たちもいつの間にか着ぐるみを着せられていた。「なっ..」「何だこれは!?」「牛になれ!」「牛の気持ちを知れ!」「よし、ここでとどめだ。やれっ!」着ぐるみの股間部分にはジッパーが付いている。いつも乳絞り会の時は、そこからペロンと陰部を出してしごかせる。そして、二郎は地上げ屋の陰茎を握った。「ヒィッ」「やめろ、やめてくれぇ~!」他の男たちもそれぞれが肉棒を握った。男たちの悲痛な叫びが響く。だが二郎たちの手は止まらない。リズミカルに動くそのフィンガーテクニックは、もはや芸術と言って良い。本来なら緊張のあまり、こんな場所では絶対に射精しないのが普通だ。だが、その地上げ屋の顔が歪んだ。「はうっ!?」『な、何なんだ、こいつのこのテクニックは!?こんな快感今までに一度も..』のけぞって体を捻り、ほとばしってくる快感に耐える地上げ屋。そろそろフィニッシュとばかりに、手の動きを早める二郎。イク瞬間の顔を絶対に見逃さないと、カウパー汁ほとばしる亀頭と顔を交互に見つめ、視点を変える三郎。限界が近い。地上げ屋はとうとう、「わ、分かった、もうこの牧場からは手を引く、だからそれ以上は...、あうっ!?」小さな吐息と共に、ビクンと跳ね上がった地上げ屋の足先。見事な放物線を描き、天に向かって白濁液が放出された。「ああっ、くっ、ち、ちくしょお~~!!」絶望と背徳感の混ざった何ともいえない嘆きとも取れる悲鳴が虚空に響いた。「フッ」その光景を見ていた太郎は、思わず笑った。「俺たちの勝ちだ」皆、手を取り合って笑った。


しかし、戦いはそこで終わらなかった。遠くからサイレンの音が聞こえてきた。警察だった。あまりの乱痴気騒ぎに何事と思った近隣住人が通報したらしい。「何の騒ぎですか!?」警察官が牧場に入って来た。そこには、

 牛の着ぐるみを着たまま、下腹部を露出させてヒクヒクと痙攣している者。あまりの気持ち良さにうっとりと目の焦点が合っていない者。何故か分からないが、アへ顔ダブルプースをしたまま放心状態で気絶している者。警察官は頭を抱えた。「..説明して下さい」誰も説明できなかった。「とりあえず、全員署まで来てもらえますか?」七人は顔を見合わせた。「俺たちも?」「全員です」「牧場を守ったのに?」「事情は署で聞きます」太郎は牛の頭を脱いだ。「勝ったと思ったのに」二郎が言った。「まあ、勝ったんじゃないか?」三郎が言った。「牧場は残ったし」六郎は、「うう、留置所じゃ、オナニーできない」五郎は、「刑務官のウンチでも研究するか..」四郎が、「面会に姉さんに来てもらって強引に肉棒を..グヘへ」七郎だけがちょっと離れた土手の上にいて、「フッ、夏草や、兵どもが夢の跡か。やはり戦いは空しいものだ。まあ、俺はこの牧場が無事ならそれで良いさ、じゃあな」そう言った矢先、 「そこか!いたぞー」警察官の一人が叫んだ。びっくりした七郎は土手を滑り落ち、警官の待つ中に転げ落ちて行った。


数日後。牧場は無事残っていた。地上げ会社は開発計画を白紙にした。牧場を利用した嫌がらせも明らかになり、警察の手入れが入った。娘はようやく安心して眠れるようになった。だが、七人はまだ戻って来ない。こってりと絞られているらしい。牧場には、彼らが残していった着ぐるみだけがあった。娘はそれを倉庫にしまった。そして、いつものように朝を迎えた。牛たちが鳴く。鳥が鳴く。子供たちがやって来る。「お姉ちゃん、牛さん見せて!」「はいはい」娘は笑った。牛舎では清掃作業が始まった。エサを入れる。糞を取る。藁を敷く。牛の体を拭く。昨日までと同じ一日だった。

 やがて町の住民の一人が、娘に尋ねた。「この牧場、かなり悪どい連中に狙われていたと聞きましたが、どうして助かったんですか?」娘は少し考えた。「変な人たちが守ってくれたんですよ」「変な人?」娘は笑った。「牛みたいな人」そう言って、娘は牛舎を見た。遠くで牛が鳴いている。風が吹いている。畑には新しい芽が出ている。娘は鍬を肩に担いだ。「うーん」娘は小さく呟いた。「これって勝ったのは、私ってことになっちゃうの?」そして牛舎へ戻って行った。

 その背後では、倉庫の中に置かれた牛の着ぐるみが、風に吹かれて少しだけ揺れていた。

(終)

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