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伴侶候補の宣言

龍王との謁見から三日。


学院の空気は、明らかに変わった。


ひそひそ声。


露骨な視線。


距離。


「広まってるな」


グレンが肩を竦める。


「龍王城に呼ばれたって時点でな」


俺は机に突っ伏したい気分だった。


リオが椅子の背に座る。


「第一波くる」


嫌な予感しかしない。


そのとき。


教室の扉が開いた。


入ってきたのは、上級貴族の令息数名。


先頭は、以前ゼルに断られた令嬢の兄。


「ルシア・アーヴェル」


名指し。


教室が静まる。


「龍王家に取り入ったそうだな」


取り入る、ね。


「事実無根です」


淡々と返す。


男は鼻で笑う。


「平民が龍王家の伴侶候補など笑わせる」


伴侶候補。


その言葉が、ざわめきを生む。


俺が言い返す前に――


椅子が引かれる音。


ゆっくり立ち上がる影。


ゼルハルト。


空気が一瞬で変わる。


金の瞳が冷える。


「候補ではない」


静かな声。


だが、教室の隅まで届く。


「俺が選んだ」


ざわり、と空気が揺れる。


男が顔を歪める。


「正気か、ゼルハルト殿下」


「正気だ」


一歩前へ。


「ルシアは俺の伴侶になる」


――は?


教室、完全凍結。


俺の思考も停止。


リオが小さく拍手。


「公開溺愛宣言」


やめろ。


男が声を荒げる。


「龍王家の血を軽んじるのか!」


ゼルの魔力が揺れる。


圧が、重い。


「軽んじているのはお前だ」


低く、冷たい。


「身分でしか価値を測れない者が、龍を語るな」


完全論破。


男は言葉を失う。


ゼルは俺の隣に立つ。


堂々と。


「俺の隣に立つのはルシアだけだ」


視線が全員に向く。


「異論があるなら、俺に言え」


挑発。


だが圧倒的。


誰も動けない。


男たちは歯噛みし、退いた。


完全ざまあ。


グレンが小声で言う。


「派手にやったな」


「……お前のせいだ」


俺が睨むと、ゼルは少し首を傾げる。


「何がだ」


分かってない顔するな。


でも。


胸が熱い。


逃げ道を塞がれた。


でもそれは――


守る覚悟の証明。


放課後。


人気のない回廊。


ゼルが俺の手首を掴む。


「嫌だったか」


珍しく、不安の色。


俺は少し考える。


「怖い」


正直に言う。


「でも」


ゼルを見る。


「嬉しくないわけじゃない」


ゼルの瞳が柔らかくなる。


「なら良かった」


そのまま手を握る。


指が絡む。


今度は自然に。


リオがにやにや。


「甘い」


無視だ。


その夜。


寮の部屋。


リオが、さらに薄い。


向こうが透けて見える。


「おい」


「順調すぎる」


少し寂しそうに笑う。


「ママが選ばれて、選び返したから」


胸が痛い。


「まだ消えるな」


「まだ消えない」


でも時間は近い。


「次の試練、大きい」


リオの目が真剣になる。


「外部勢力」


「学院外?」


頷く。


「龍王の三ヶ月放置、利用される」


守りがない今。


狙われる。


そして――


未来でゼルが重傷を負った本当の事件。


まだ核心は消えていない。


「ママ」


リオが真っ直ぐ見る。


「今度は守られるだけじゃダメ」


分かってる。


俺も、隣に立つ。


数日後。


学院外演習の通達。


場所は王都郊外。


三日間の合宿。


龍王家は干渉しない。


絶好の機会。


リオが静かに言う。


「ここが山」


最大分岐。


ゼルが俺を見る。


「離れるな」


真剣な顔。


俺は頷く。


「お前もな」


ゼルが少し笑う。


「命令か」


「そうだ」


金の瞳が甘く細まる。


「従う」


龍は、俺の言葉に従う。


三ヶ月の試練。


本番が、始まる。

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