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龍王の前で、選ばれる

王城は、空気が違った。


重い。


高く、静かで、逃げ場がない。


「帰りたい」


小さく呟くと、隣のゼルが即答した。


「帰らない」


「まだ何も始まってない」


「始まる前に逃げるな」


手を取られる。


自然に。


指が絡む。


ここ、王城の廊下だぞ。


「ゼル」


「離さない」


堂々と言うな。


リオが俺の肩に座りながら言う。


「龍、宣戦布告モード」


笑えない。


大扉が開く。


そこにいたのは――


銀髪の男。


年齢不詳。


威圧だけで分かる。


龍王。


「……それが」


低く響く声。


「ゼルハルトが選んだ者か」


視線が刺さる。


足が震えそうになる。


でも。


逃げない。


「ルシア・アーヴェルです」


頭を下げる。


「平民です」


わざと付け足した。


龍王の目がわずかに細まる。


「理解しているか」


「何を」


「龍の伴侶になる意味を」


空気が重い。


横でゼルが一歩前に出る。


「父上」


「黙れ」


一言で封じられる。


王の威圧。


「平民を迎えれば、反発は必至。貴族、他種族、龍族内からも」


事実だ。


分かっている。


「それでも選ぶか」


問いはゼルへ。


ゼルは迷わない。


「選ぶ」


即答。


空気が震える。


「地位も、力も、必要なら捨てる」


は?


「おい待て」


思わず腕を掴む。


ゼルが俺を見る。


「俺はお前を選んだ」


金の瞳が揺るがない。


「王位より、お前だ」


心臓が痛い。


重い。


重すぎる。


「そんなの、いらない」


思わず言う。


龍王の視線が俺に向く。


「ほう」


俺は息を整える。


「ゼルが捨てた地位の上に立つ気はありません」


震えてる。


でも止まらない。


「俺は隣に立ちたい。背負わせる気も、捨てさせる気もない」


沈黙。


ゼルが固まる。


リオが小さく笑う。


「合格ライン」


龍王の口元が、わずかに動いた。


「面白い」


空気が緩む。


「平民でありながら、王子を止めるか」


ゼルが俺を見る。


驚きと――誇らしさ。


龍王はゆっくり立ち上がる。


「試す」


やっぱり来た。


「三ヶ月。学院内外で起こる問題を共に乗り越えよ」


視線が鋭い。


「その間、龍王家は干渉せぬ」


干渉しない?


つまり――


守られない。


ゼルが口を開こうとする。


俺が先に言う。


「受けます」


リオが頷く。


「これ、未来最大分岐」


龍王は静かに言った。


「龍は伴侶を守る種族だ」


「だが伴侶が弱ければ、龍は壊れる」


未来のゼル。


重傷。


自責で壊れかけた俺。


繋がった。


「証明せよ」


王は背を向ける。


「その身で」


帰り道。


ゼルは無言だった。


俺も。


城門を抜けた瞬間。


ゼルが俺を壁際に引き寄せる。


「何する」


「……捨てなくていいと言ったな」


近い。


近すぎる。


「当たり前だ」


ゼルの指が頬に触れる。


優しい。


でも熱い。


「俺は全部捨てる覚悟だった」


「だから重いんだよ」


ゼルが少し笑う。


「嫌か」


「……嫌じゃない」


本音が漏れる。


ゼルの瞳が甘く溶ける。


「なら、証明する」


低い声。


「お前を選んだことが正しいと」


距離が、さらに縮む。


唇が触れそうで――


「待った」


リオが間に割り込む。


「今それやると未来ずれる」


「空気読め!」


ゼルが低く唸る。


リオはにやにや。


でも。


その身体はさらに薄い。


「リオ」


呼ぶと、少し照れた顔をする。


「三ヶ月で決まる」


静かに言う。


「ここ乗り越えたら、オレ帰る準備」


胸が締めつけられる。


ゼルが俺の額に軽く触れる。


キス未満。


でも十分甘い。


「三ヶ月で終わらせる」


宣言。


龍の覚悟。


そして俺の覚悟も試される。

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