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龍は甘く、そして重い

ゼルの怪我は軽傷――のはずだった。


「軽傷の定義がおかしい」


俺は医務室で腕を組む。


包帯を巻かれたまま、平然と座っているゼル。


「平気だ」


「平気じゃない。昨日、血だらけだった」


ゼルは少しだけ視線を逸らす。


「……お前が無事なら、それで」


またそれだ。


リオがベッドの端に座りながらぼそっと言う。


「重い愛」


「聞こえてるぞ」


ゼルが低く返す。


「オレのことは見えないけど、気配で察してる?」


鋭いな。


龍の勘、恐ろしい。


俺はため息をつき、包帯に触れる。


「ちゃんと治せ。命令」


言った瞬間。


ゼルの瞳が揺れた。


「命令?」


「そうだ」


強く言う。


ゼルはゆっくり笑った。


「……嬉しい」


何が?


「俺を縛るのは、お前だけでいい」


やめろ。


甘さが限界突破する。


リオが小さく拍手。


「ママ顔赤い」


うるさい。


その帰り。


廊下でグレンと鉢合わせた。


「よ、看病帰りか?」


「ち、違う」


グレンはにやっと笑う。


「龍、相当囲ってるな」


「囲われてない」


即否定。


でも否定しきれない。


「ま、悪い男じゃねぇ。だがな」


グレンは少し真顔になる。


「龍は独占強い。お前が他の男と近いと、マジで目が怖ぇ」


……そんなに?


そのとき。


背後に圧。


振り向かなくても分かる。


「楽しそうだな」


ゼル。


グレンが肩を竦める。


「ほら来た」


ゼルの視線は俺に向く。


「何の話だ」


「別に」


グレンがわざと俺の肩に軽く触れた。


瞬間。


空気が凍る。


ゼルの瞳が金に光る。


「触るな」


低い。


完全に龍。


グレンが笑う。


「冗談だよ。番候補」


「だからやめろ」


俺は二人の間に入る。


「ゼル、落ち着け」


腕を掴む。


その瞬間、ゼルが固まる。


「……お前が触るのはいい」


何それ。


リオが爆笑。


「龍、分かりやすい」


ゼルは俺の手をそっと握り返す。


自然に。


当然みたいに。


「他の男に笑うな」


「は?」


「俺だけにしろ」


直球。


独占欲全開。


心臓がもたない。


「無理だろ」


「努力しろ」


真顔。


重い。


でも――


嫌じゃない自分がいるのが一番怖い。


その夜。


寮の部屋。


リオが窓辺に立っていた。


月明かりに透ける身体。


「リオ?」


振り向く。


少し、薄い。


「……お前、薄くなってないか」


リオは肩を竦める。


「未来修正の反動」


胸が冷える。


「消えるのか」


「まだ平気」


笑う。


でも少し寂しそう。


「ママが幸せに近づくほど、オレの役目減る」


それはつまり。


「帰る日が近いってことか」


小さく頷く。


「でもちゃんと生まれる」


まっすぐ見る。


「ママが幸せな未来なら、オレ絶対生まれる」


胸が詰まる。


「……絶対だぞ」


「当たり前」


少し背伸びする仕草。


五歳なのに、やけに大人びてる。


「次の大きいの、ゼルの覚悟」


「覚悟?」


「王と同等の龍が、平民選ぶってどういうことか」


――あ。


身分差。


今は学院。


でも卒業後は現実。


「ママ、試される」


リオの声が静かになる。


「龍は全部捨てられる。でも周りが許さない」


不穏。


でも。


俺は拳を握る。


「逃げない」


もう決めている。


守られるだけじゃない。


隣に立つ。


リオがにやっと笑う。


「それでこそ」


月明かりの中。


リオの輪郭が一瞬揺らいだ。


消えないでくれ。


まだ。


まだ一緒にいたい。


そして数日後。


王城からの正式招待状が届く。


差出人――


龍王。


ゼルの父。

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