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幸せを選ぶ覚悟

龍族内部を黙らせた翌日。


王都が揺れた。


龍王城の結界に干渉の痕跡。


内部犯ではない。


もっと古い。


もっと執拗な敵。


「黒幕、出てきた」


リオの声は、もう風みたいに薄い。


「龍と平民の結びつき、潰したい勢力」


ゼルが真剣な顔で俺を見る。


「城に来い」


拒否はない。


俺は頷く。


龍王城・最奥。


巨大な結界核。


そこに刻まれた歪な術式。


前世の記憶がざわつく。


禁術。


魂干渉型。


「伴侶認定を逆手に取る気か」


龍王が低く言う。


術はこうだ。


龍と伴侶の魂を共鳴させ、暴走させる。


ゼルが俺を見る。


理解した。


俺を巻き込めば、ゼルは理性を失う。


龍王家の信用は失墜。


完璧な罠。


「俺が壊れる前提の術か」


ゼルが笑う。


冷たい。


危険な笑み。


でも。


リオが首を振る。


「違う。壊れるのはママ」


血が引く。


未来で俺が壊れかけた理由。


これだ。


ゼルが暴走し、自責で俺が壊れる。


その連鎖。


「止める」


俺は前に出る。


「術式、組み替えられる」


龍王が目を細める。


「できるか」


「やる」


逃げない。


幸せを選ぶ。


ゼルの手を握る。


「俺は、お前を選ぶ」


はっきり言う。


震えない。


「身分も未来も関係ない。俺は幸せになる」


リオが笑う。


泣きそうな顔で。


「それ」


術式が発動する。


結界核が暴走。


蒼と黒の光が絡み合う。


ゼルの瞳が完全竜化。


鱗が広がる。


暴走寸前。


「ルシア、離れろ!」


龍王の声。


でも俺は離れない。


ゼルの胸に手を当てる。


鼓動が荒い。


「ゼル!」


叫ぶ。


「俺はここにいる!」


術式を読み替える。


魂の共鳴を、破壊ではなく――


結束へ。


「反転再構築!」


光が弾ける。


ゼルの魔力が収束する。


暴走、止まる。


龍王が息を呑む。


「魂を、繋ぎ直した……」


俺は膝をつく。


限界。


その瞬間。


ゼルが俺を抱き上げる。


「無茶をするな」


震える声。


今度は、俺が守った。


対等。


隣。


そして。


光の中で。


リオが、はっきりと立っている。


さっきまで透けていたのに。


今は、輪郭が濃い。


ゼルの視線が、止まる。


金の瞳が見開かれる。


「……子供?」


空気が止まる。


リオがゆっくり振り返る。


ゼルを見る。


にやっと笑う。


「やっと見えた」


ゼルが息を呑む。


「お前は……」


リオは胸を張る。


五歳。


でも誇らしい顔。


「未来で待ってる」


俺を見る。


「ママ、合格」


涙がこぼれそうになる。


「幸せ、逃げなかった」


ゼルが震える声で言う。


「俺たちの……」


言い切る前に。


リオの身体が光になる。


小さな手を振る。


「また生まれる」


そして。


消えた。


完全に。


静寂。


俺は立ち尽くす。


ゼルの腕が、強く抱き締める。


「……俺たちの子だな」


確信の声。


俺は涙を堪えきれない。


「そうだよ」


名前を呼ぶ。


「リオ」


風が、優しく吹いた。


未来は変わった。


不幸ルート、強制終了。


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