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「はぐれるといけないから手を繋いだ方がいいよ兄貴」
俺は頷くとゴンタコの手を握ってブラックホールに向かって泳いで行った。
しばらく進むとゴンタコの声が途切れ途切れに聞こえてきた。
「アニギィいい...ア...ヴィアあああああああ」
その後すごい泳ぎにくいと思って見たらゴンタコをぶん回していた。
「大丈夫か?...これじゃあ進めないしな、俺の背中に乗れ」
「ゥヴェエエィ...わかったよ兄貴」
俺は気持ち悪そうなゴンタコを乗せブラックホールへ泳いで行った。
その後ブラックホールに向かっていたと思ったら闇の中にいた。
「それじゃあ中に入ったから気合い入れて外に出るよ。うりゃああああ!」
俺は何も見えない中、背中の上で叫んでるゴンタコがうるさいなと思ってたら、ブラックホールから出ていた。
「なんか匂いがしないなあ、ここ違うみたいだ。もう一度行こうか!」
ゴンタコは明るかった。なので俺は、すぐ行けるんだろうと軽く考えていた。
「匂わないなあ?兄貴もう一度行こうか!」
俺は20回目から数えるのやめていた。いつまで続くんだろうか?
何回か忘れた頃だった。
「この宇宙の匂い、着いたよ兄貴!」ゴンタコは普段通り元気だ。
「お前10回どころじゃなかったぞ」
俺は近くで何回も叫び声を聞いてたので、かなり疲れていた。
「けど、いつもより早かったよ!兄貴悩んだらダメだよ!」
俺はこいつには言われたくないような気がしたが、疲れたのでほっといた。
「さあ、今度は宇宙の匂いをたどって泳ぐよ。出発!」
俺は希望の宇宙に着ついたのに、まだ匂いをたどると言ったのが不思議だった。
しかし、めんどいので頷くとゴンタコを乗せて泳いで行った。
その後しばらく泳ぐと、以前いた星に似た青い星が見えた。
そしてゴンタコが黒い気合い空間を広げると地上に降り立った。
その10分前、異世界ダンダラの惑星ドコピカの魔王城最奥では激しい戦闘に決着がついていた。その時だった追い込まれた魔王が背後を確認しながら言った。
「流石だな勇者ども、だが余にはまだ奥の手がある」
魔王は奥の隠し扉に逃げ込み、地下の部屋まで逃げ込んだ。そして部屋の後ろにある祭壇の頑丈そうな蓋を触り何かを唱えた。
「魔王待てええ」「待てえええ」「みんな、待ってええ」
勇者達が追ってきた時には、すでに蓋が開き中から怨念が祭壇の上の死神のような像に吸い込まれていった。
直後に像から血のような赤い空間が漏れ出し、部屋の中が真紅の空間になった。
そして、その像がヒビが割れると中から真紅の人型の骸骨が鎌を持って立っていたかと思うと真紅の人型になった。
「我は死神である」骨を擦り合わせたような不気味な声が響いた。
「死神様、私の願いはこの世界の支配です。まずこの勇者どもを倒してください」
ボロボロの衣装で逃げてきた魔王は死神に土下座した。
「願いは聞き届けた。...じゃあ死んでおけ」
死神がゆっくりと鎌を振り上げ、勇者達は身構えた。
その頃ゴンタコが黒い空間を解いた途端に地面が俺の重みで崩れ落ちていた。
「すごい宇宙の匂いが近くなったよアニキ」ゴンタコは鼻をヒクヒクさせている。
「それ宇宙じゃなくてお前の叔父の匂いじゃねえの?」俺は言いながら、ここも地面脆いなあと思った。
そして周りを見ると赤い空間が広がり、近くに鎌を振り上げた赤い人形がいた。
「おじさん、ちょっといい」ゴンタコはその人形に気軽に話しかけた。
「お、お、ま、まああああ、えええええええええわあああああああ!」
死神の真紅の人型外装が消えると、中からケチャップ塗ったくったような綺麗な女の子の姿が現れゴンタコの顎に渾身のアッパーをめり込ませた。
「てめえは、てめえは、てめえは、いつも、いつも、いつも、いいとこで邪魔しやがってこの阿呆があああ」
俺はゴンタコがぶっ飛ばされ、しかも首を絞められてるのを見て心が少しスッとした。
その頃、魔王と勇者達は何が起こってるか早すぎて見えていなかった。と思ったら勇者に付いていた、この惑星の主神のドコピカも姿を現した。その見た目はローブを着ていて綺麗で優しそうな女性だった。
「あのお、死神さん何が始まったんですかあ」
「だああ、すいませんドコピカさん。ウチの親戚のガキの邪神なんですが空気全然読まないんですよ...ってギィイブッ」
死神はゴンタコを今度は四の字固めに決めていたが、裏側に返され痛がっている。ゴンタコはニヤけながら首を振っていた。
「ちょっと待ってくださいね、この子達にはわからないように、えい!なんか一人増えました?」
ドコピカから複数の輝く白い球体が出ると魔王と勇者達と俺を包み込んだ。
「これでよし!」
ドコピカがほっとしてると、俺を包んだ光がパンと消えた。
その時の俺は、ゴンタコがやられる姿を静観していただけなんだが。
「あ、あ、あなたは一体何者なんですか?」
ドコピカが驚愕の表情で聞いてきた。
「俺はアニキです」
「ああ、あの邪神の兄さんなんですか」
「違います、名前がアニキです」
「へえ???」
「普通になる方法を探してます」
「はい???」
「また言葉が通じて俺は感動している」
「ほお???」
片方は元気に暴れ合い、片方は意味が通じないまま時間が進んでいった。




