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Ep3-2 英太排除指令

高校生の日常生活に戻った英太だったが、その裏では暗雲が立ち込めていた――

「レムナンツ・ハンズの新顔だが、面識があるのか?」

 レイドから一夜明けたチームの会合で漣が桔花に問いかけた。

「……学校の同級生よ、クラスは違うけど。あいつが術式が使えるって知ったのはつい先日のことよ」

「何者だ?」

「石守英太。都立八坂台高等学校二年生。父親は会社員、母親は看護師。妹を含めた四人家族。典型的な共働き家庭ね。父親の会社もレイド関連のつながりはないわ。シロよ」

 ユナが予備調査結果を報告する。

「ね?ただの高校生よ。一般人。偶然新宿のレイドを目撃して、そこで量子結晶を拾ったらしいわ。学校で偶然出くわして、初めて量子結晶を使ったところを見かけたのよ……事故みたいなものよ」

 当時の状況を思い出してか、桔花がわずかに頬を赤らめる。

「なるほど。正規の登録も無しにレイドの結界に踏み込めるだけの術式適性か。危険だな」

「えっ?でもでも、あいつはずぶのシロウトよ。偶然巻き込まれたってだけで、何か狙いがあって近づいてきたわけじゃ……」

「だからこそだ。無自覚な適性者は一歩間違えばあちら側に引き込まれる危険がある。おまえの身近なところに生活圏があるということは、それだけリスクが高いということだ」

「なら、あたしたちで教育すれば……」

「彼はすでにレムナンツ・ハンズと行動を共にしている。明確な敵対チームではないが無条件に信用できる相手でもない。どのような関係を築いているか確認できない以上、リスクは避けるべきだ」

「……」

 桔花は何か言いたそうな表情だったが、それ以上の反論は出来ずに黙り込む。

「石守英太を排除する」

 漣の非情な指令を告げる乾いた声が室内に響いた。


 ***


「英太を切り捨てる?どういうことだよ、カサギさん!」

「そのままの意味だ。やつとは縁を切る。もともと試用期間だと言ったはずだ。本採用は無しだ」

「だからなんでなんだよ。理由は?」

「僕も理由は知りたいですね。あれだけの術式適性者は滅多にいないですよ?」

 カサギは散らかった荷物を整理する手を止めてアジトの中を見回す。

 ソファから立ち上がって拳を握るケイタ、椅子に反対向きに座って背もたれに腕を組み興味津々という目を向けるトオノ、聞いてないふりでモニタを見ているが耳だけはしっかりとこちらに向けているメイ。

 若い連中しか集められない自分の力不足が胃にずしりと重石のように圧し掛かる。

「ケイタはレイドに参加してからどのくらいになる?」

「もう一年だぜ」

()()一年だ」

 オレもいっぱしのレイダーだと言わんばかりに胸を張るケイタ。だがカサギがそれに被せるように言い放つ。

「トオノもメイもまだ数年目の駆け出しだ。レイドの世界はそんなに甘いもんじゃない。この業界には堅気の世界以上に深くて剣呑な闇があるんだ。おまえらは大海の表層を泳ぐ小魚に過ぎないんだよ」

 反論しようとするケイタを目で押さえ込んで、トオノとメイにも向けて続ける。

「英太の素質は本物だ。だが俺たちではやつを育てるのに十分なリソースを割く余裕はない。力不足なんだよ。そんな人材を俺たちのような後ろ楯を持たない弱小チームが抱え込んでいたらどうなるかわかるか?より上位のチームに狙われるようになるんだ。いままでお目こぼしをしてくれていた上位チームが寄ってたかってウチを潰しに来る。そうなったとき、俺はお前たちを守りきれない」

 レイドはルール上、殺生を禁じている。だがルールがあるということは、もともと危険性があるということだ。不測の事態はいつだって起こりうる。

 俺はもう二度と、チームメンバーを失わないと誓ったんだ。

「だったら、英太はどうなるんだよ?」

「正式なメンバーでもないやつのことなど知ったこっちゃないね。レイドは慈善事業じゃないんだ。他人の世話まで焼くようなお人好しが生き残れる世界じゃあない。それが分からないうちは、おまえは半人前だよ」

 あれだけの素質だ。消されることはないだろう。きっとどこかの強力チームが取り込むことになる。そこに本人の意思が考慮されるかどうかは未知数だが。

 英太は将来大きな壁となってレムナンツ・ハンズの前に立ちふさがるかもしれない。だが、やつを抱え込むリスクとは比べるべくもない。それがチームリーダーとしての判断だ。

「納得いくかよ!オレはあいつに約束したんだ。護ってやるって。リーダーがチームメンバーだと認めなくても、英太はオレのダチだ。放っておけるかよォ」

 ガーン、とドアを叩きつけるようにしてケイタがアジトを出ていく。

「ちょっと冷た過ぎじゃないっすか?」

 ケイタの出ていった玄関のほうを見ながらトオノが控えめに声を上げる。

「大人はな、自分のやることに責任を取らなきゃならん。だからこそ、取れない責任は負っちゃダメなんだよ」

「そういうもんなんですかね」

 つまらなさそうにトオノが返す。

 そうだ。大人になるっていうのは、つまらないものを飲み込んでいくってことなんだよ、小僧ども。


 ***


所属チームという庇護を失った英太にノクターナルの魔手が迫る――

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