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Ep3-1 夜嵐のあとに(2)

学食で偶然、生徒会長と相席になった英太にさらなるハプニング?が――

「会長、そろそろお時間が……」

「あら、いけませんわ。生徒会がテーブルを占領していては皆さんにご迷惑が掛かりますわね。では石守さん、またのちほど」

「……はい」

 のちほどってなんだ?また生徒会室に呼び出されたりするのかな。

 ようやくすすれるようになったうどんを食べながら前回の生徒会室訪問を思い浮かべる。

 そういえば綾神さん、魔石のことに詳しいって言っていたし片梨さんとも面識があるみたいだった。とすると、レイドのことも知っているのかな。やば、レイドって非合法っぽいし、バレたら退学?

 自分の思考に没頭してうどんをすすっていた俺は、生徒会が去ったあとのテーブルに誰も近寄らないことにも、俺に向けられた周囲の好奇の視線にも気づいていなかった。


 そして午後の授業も無事にこなして放課後になった。

 今日は寝不足だから速攻で帰宅して晩御飯まで昼寝をしよう。そうしよう。

 決意を胸に昇降口に向かう。

 このまま何事もなく……

「やっと捕まえた。ちょっと来なさいっ!」

 帰宅部で混み合う昇降口に響き渡る声の主はもちろん片梨さんである。

 ここまで何とか遭遇せずに来たので、もしかしたら今日は学校を休んだのでは?と期待していたのだけれど。下駄箱の前で待たれては逃れようもない。

 助けを求めるように振り返ったところに目を丸くしたカトウの姿があった。

 思わず手を伸ばし懇願の表情で窮地を訴える。だが、友人だと思っていた男は無情にも首を横に振って俺を見捨てた。

 片梨さんは俺の手首をつかむとそのままいつぞやの非常階段まで俺を引っ張っていった。

「あんた、一体何を考えているの?」

「……といいますと?」

「あたしのところに来るように言ったわよね?それがどうしてあんな駄犬のチームに入っているのよ?」

「あー、いやまあ、成り行きといいますか」

「あの駄犬と前から知り合いなの?」

「いえ、知り合ったのはつい二、三日前です。不良にからまれていたところを助けてもらって……」

「なによそれ。それならあたしの方が先約じゃない。そんな理由であたしの誘いを振ったの?どうせその不良も連中が雇った自作自演マッチポンプじゃないの?情に訴えるなんてせこいヤツ」

「いえ、そういうわけでもなくて。助けられたあと、拉致られて脅されてそれでレイドに参加することになったっていうか……」

「……シロウト相手に、連中、とんでもないわね。これでわかったでしょ?ふらふらしていたらもっと怖い連中に取っ捕まるわよ」

「でも付き合ってみたらそんなに悪い人たちじゃないみたいだし……」

「なによ、すぐほだされちゃって。あんたもうあの連中と契約しちゃったの?」

「契約とかはなかったけど」

「じゃあ、次の約束とか連絡先とか」

「次の約束はないですね。連絡方法も聞いてないな……」

 そうだよね。よく考えたら、臨時雇いだった感は否めないな。レイドでいっしょに過ごした時間が濃密な体験だったから勘違いしてしまったけれど、レムナンツ・ハンズの面々とはほんの一、二回、ほんの数時間顔を合わせただけの間柄だった。俺自身も正式にチームメンバーになるのかと問われても答えられない。


 俺はもう一度、あの強烈な体験を味わいたいと思っているのだろうか。

 俺はレイダースになりたいのか?


「あんな半端者チームなんかよりあたしのチームのほうがよほどいいわよ。技術レベルも高いし装備も資金も潤沢だし。ちょっと、あんた聞いてるの?」

「ん……ああ」

 考え事をしていて片梨さんの言葉を聞き流していた。


「もう。バカ英太。あんなヤツなんか忘れて、あたしと付き合いなさいって言ってんのよっ!」


 片梨さんのひと際大きな声が校舎に反響する。

 なぜか少し離れたところから息を飲む気配がした。

 振り向くとそこには口元に手を当てた数人の女生徒と、あと、俺を見捨てたカトウの姿があった。

「きゃー、告白よ!」

「片梨さんからなんて意外!!」

「相手は誰?知ってる?」

「知らなーい」

「ウワサの2-Fの男子じゃない?」

「「「えーっ!!!」」」

 ひそひそ声で噂をさえずる女子達の横で、カトウが豆鉄砲を喰らった鳩のように目を丸くしている。

 片梨さんの顔がみるみる赤く染まる。

 照れてる?いや、なんだか背景に炎のオーラが立ち昇っているような……。

「べ、別にそういうんじゃないから。あーもう。とにかく明日のお昼休み、あけておきなさい。いい?今度バックレたら承知しないんだから」

「いや、でも昼休みは学食に……」

 明日は母親が休みの日だから弁当はあるはずだけど、今日の経験を活かして学食に行くことにすれば片梨さんに会わなくて済むという計算だ。

「じゃあ、あんたの分もお弁当をもってくるわよ」

「えっ?」

「場所は……最初のところがいいわね。いい?絶対来なさいよ」

 予想外の切り返しに返事に窮しているうちに片梨さんは行ってしまった。

 なんだか斜め上方向に面倒な感じになってない?

 まだ固まっているカトウを残して、俺は昼寝のために家路を急いだ。


家路を急ぐ英太。明日に待ちうける波瀾の予感は――

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