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Ep2-3 渋谷地下、進攻

充実した隊員数と最新鋭の武装を誇るバロック・ドッグスが先陣を切り、渋谷地下の攻略が進行してゆく――

『アルファ・コントロールからアルファ・リーダー。そのまま中央通路を東進、百メートル先左に生体反応』

「アルファ・リーダー了解」

 バロック・ドッグスの隊長と思われる男が腕時計を確認して指令を出す。

「ブラボーチームが先行して伏兵を処理。アルファが中間、チャーリーが殿しんがりだ。時間が押している。伏兵の処理には手榴弾の使用を許可する。素早く展開するぞ」

「「「アイ、コピー」」」

 号令と同時に三人がアサルトライフル型デバイスを抱えて小走りで進行、そのあとを数メートル開けて隊長を含んだ三人が追従する。後ろのチームはときどき立ち止まってトラップを仕掛けながら進む。

 先行するブラボーチームが生体反応のあった通路の角で立ち止まって様子をうかがい、一斉射する。

 タララッ、タララッ

 すぐに通路の奥から反撃があった。

 タタタタタ、タタタタタッ

 角から覗き込んでいた上半身を戻して反撃が止むのを待つ。

 銃声が止まったところで先頭の味方が再度弾をばらまくのに合わせて、低い姿勢で待機していたブラボーチームの二人目が通路前を一気に横切る。

 ダラララララッ

 通路入り口の両側から斉射。跳弾も狙って上下左右に存分にばら撒く。

 ダララララララララララッ、ダラララララッ

「うっ」「ぐっ」

 声にならない反応があり、伏兵の反撃が止む。

 ブラボーチームの三人目が用意していた手榴弾を通路の奥に投げ入れ、素早く身を隠す。

 ドォーン、という轟音と押し寄せる空気圧が鼓膜を圧迫する。

 戦果を確かめる前に中段を構成していたアルファチームが追い抜いて中央通路を直進していく。そのあとを伏兵の掃討を確認したブラボーチームが追従する。最後に到着したチャーリーチームが通路の状況を確認してトラップの設置は不要と判断し、すぐに他のチームを追いかけた。

 中央通路は丁字路に突き当たり、そこでも散発的な戦闘があった。

 バロック・ドッグスは敵性勢力を制圧したあと、右手の通路の壁の指定場所にチャーリーチームが陣取り、彼らを左右から守る形でアルファチームとブラボーチームが外に向けてアサルトライフル型デバイスを構える。

「爆薬はまだあるか?」

「ちょっと心もとないですね」

「こちらを使え」

 隊長が自分のストックをチャーリーチームに渡す。受け取った隊員が素早く包み紙を破いて粘土をこねるようにして形状を調整する。別の隊員が壁に開けた穴に爆薬を突っ込んでいき、雷管をセットしていく。準備が完了したところで隊長の肩を叩いて合図を送り、全員が距離を取って安全な体勢を確保する。

 隊長のハンドサインにうなずいて、起爆装置を持った隊員がスイッチをひねる。

 ゴォォォン

 大音声が響き、壁面の一部が崩れ落ちる。狙いはドンピシャで、粉塵の奥にレンガ造りの古い通路が現れた。

「いくぞ」

「了解」

 バロック・ドッグスは一人ずつ狭い通路へと入っていった。


 ***


「連中、今回はずいぶんと派手にやるわね」

『このエリアは取り壊しが決まっているのよ。運営からは戦闘の痕跡については制限なしの指示が出ているわ』

 桔花のつぶやきをインカムが拾い、地上の隠れ場所から情報管制を行っているユナが答える。地下の移動になるため電波ラジオ通信ではなく量子結晶体を用いた量子通信だ。無線傍受の心配がないからつい無駄口が増えてしまう。

「なるほどね。坊やたちは存分にオモチャで遊べる機会を満喫中ってわけか」

『そういうこと。だから気をつけてね』

「オモチャはしょせんオモチャよ。奥の院は結界強度が高いわ。並みの銃火器じゃ防御術式の障壁を抜けないわよ」

『それはそうだけど、油断は禁物よ。まあ、桔花なら大丈夫だろうけど』

「そろそろだ。集中しろ」

「アイ、サー」

 展開したマップに集中して漣がバロックドッグスの動きを監視している。

 ドーーーン

 すぐに壁を破壊する爆薬の音が聞こえてきた。

 数十秒待ってから中央通路を曲がり、バロックドッグスが完全に姿を消しているのを確認する。

「通路の解放、ごくろうさま」

「いい手際だ。それにしても伏兵が多いな。ここまで全部バロック・ドッグスの連中が始末してくれたが」

 ショーが珍しく競合チームの仕事を褒める。

『渋谷の地下は入り口が多いからね。誰かが複数の小規模チームに侵入ルートの情報を流したんじゃないかしら』

「運営の仕業?」

『それもありそうだけど、この手の競合チームをコントロールする手法は身に覚えがあるのよね』

OZ(オズ)か」

「うぇー、あいつら、来てるの?」

『今のところ形跡はないわね。まあ、こんなに混戦状態じゃ、連中の動きはつかめそうにないけど』

「それが狙いか」

『そういうこと。獲物を横取りされないように注意してちょうだい』

「了解した。この先の通路は狭い。一列縦隊で行くぞ。先頭はショー、中段は桔花、殿しんがりは俺だ」

「了解」

「奥は術式による妨害が予想される。術師が出てきたら先頭を桔花と交代」

「オーケイ、任せてよね」

 ノクターナルはバロック・ドッグスから数分遅れで地下に埋もれた聖オルテンシア教会の遺構へと入っていった。


 ***

先頭を走るバロック・ドッグス。山場は別にあると踏んで静観をきめこむノクターナル。漁夫の利を狙うレムナンツ・ハンズ。一つのロスト・アセットを巡ってレイダース達の駆け引きが交錯する――

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