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ショートショート・バケーション
『いつまで生きているんだろう、いつまで生きていけるんだろう……この星の知的生命体は?』
『まあ、もう少しのしんぼうだ。じきに彼らはまた大きな戦争を始めて、自分たちの造った兵器を扱いきれずにドカーン! だ。残されるのは焼け野原とぐずぐずになった動植物……知的生命体は一体だって残りゃあしないさ』
『そうしてあとは十万年もかかるかねえ……核に汚染された大地と草木、動物たちが本当に回復するには……』
『まあいいさ。僕らにとっちゃ十万年は、たいした時間じゃないからな。ちょっとばかり昼寝でもして、お茶とお茶菓子をつまんでいればすぐ経つさ』
『そうしたら僕らは改めて、この星の再開発と行こうじゃないか……大丈夫、僕ら「本当の知的生命体」の手にかかれば、この星はもう二度と焼け野原になんかならないさ!』
そんなことをささやき交わし、宇宙人たちは白く柔い物体にくるまり、やがてかすかな寝息を立てだした。
あらゆるレーダーに感知されない透明な宇宙船のはるか下、地球上の人間たちが第三次世界大戦に向け、着々と準備を始めていた。
(了)




