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いつかどこかで

ほんのりガールズラブ? かつ、後味の悪い掌編です。苦手な方はご注意を……。

 妖精たちは『養殖所』で人間に飼育されていた。


 多頭飼いもいいところで、狭苦しいケージの中に百匹以上が詰め込まれて飼われていた。


 その中でも、特に仲の良い二匹がいた。一匹の識別ナンバーは『α/223』、もう一匹は『β/569』だった。


 二匹は互いを『アルファ』『ベータ』と呼び合っていた。アルファもベータも他にいくらもいたのだが、二匹のあいだでしか妖精語で会話をしないので、それで何にも問題はなかった。


 アルファはふわふわの金髪に宝石のような青い瞳、ミニサイズのお姫様のような見た目……、


 ベータは小麦色の短髪にもえの瞳、素朴な村娘のような、そばかすの可愛らしい妖精だった。


『ねえ、私たちいずれここを出て、街の人間にペットとして飼われるのよね』

『きっといったんはばらばらに別れてしまうけれど、長く飼われていれば、きっと「ペット交流会」か何かで、また絶対に出逢えるわよね……』

『お互い、めいっぱいいろんなことを我慢してでも生き延びて、絶対に再会しましょうね……!』


 二匹はいつもそうささやき交わしていた。()()()()とした話し声は、人間の耳には虫の歌声と同じようにしか聞こえなかった。


 ……やがて、『出荷』の時が訪れた。上司らしき人間は、まだ少しは良心を持ち合わせている部下に向かって、感情もなく言い捨てた。


「よし、さっそく準備しろ。そうだな、アルファ群は見た目が良いから全てペット用にしろ。各自の衣装を整えろ。最上級のドール用で良い……ベータ群は食用だ、見た目があまり良くないからな」


 気の毒そうに眼にかげりを宿した青年に、壮年の上司は気づくこともなく言葉を重ねる。


「ベータどもはフリーズドライの機械にかけて、適当にクラッシュしといてくれ。そばかすだらけの見た目でも、砕いてスープのクルトン用には使えるだろう!」


 人間の言葉を理解も出来ず、アルファとベータは涙ながらに『しばしの別れ』を惜しんでいた。


(了)

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