表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/57

単身赴任

「パパー! 見える? 画面映ってるー?」

「ああ、見えるよ! お前の可愛い顔が……となりに映る美人は誰かな?」

「もう、あなたったら! こっちの画面にはハンサムな殿とのがたが映っていてよ……あなた、そちらの生活には慣れました?」

「慣れた……と言いたいとこだがね、正直ひどい場所だよ、ここは! 暑いところは無駄に暑いし、寒いところは極限まで寒いんだ! 食べ物もあまり良くないね、死者の生肉に血のワインときたもんだ! 君の手料理が恋しいよ!」

「まあ、あなたったら……もう少しのしんぼうよ、人手が足りなくてそちらに派遣されたけど、もうじき任期が終わってこちらに帰ってこれたら、めいっぱい手料理をごちそうしてあげますからね!」

「それにねー、今のお仕事してるパパも、何かめっちゃくちゃカッコいいよ!」

「はは、そう言ってくれると嬉しいけどね、何かちょっとフクザツだなあ……単身赴任はツラいねえ……!」


 そうこぼして一時的に地獄で務めている『カッコいいパパ』は、はああと大きくため息した。


「がんばって、ルシファー……」

「そうだよ、パパー! パパがんばれー!! おっきなツノにこうもりの真っ黒い羽根いっぱいのパパ、カッコいいー!!」

「ははは、そうだね、がんばるよミカエル……はぁああーーっ」


 水晶のスクリーン越しにはげましてくれる天使の妻子に、魔王の父は笑った後で深くふかーく息をつく。ああもう……『最後の審判』が待ち遠しい……!!


 魔王は任期を終えて天界に戻り、愛しい妻子と再会するのを、心から願いつつ血のワインをぐいっとあおる。鉄のにおいに絵に描いたようにむせっかえり、「ああぁあ神酒ネクタルが飲みたいよー!」と今度はほんとに泣き出した。


 窓の外、地獄の火山が笑うようにぼんぼんと激しく火を噴いて、そのすぐそばで氷の山が白い冷気を放っていた。


(了)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ