吐血
※いささかセンシティブな描写が含まれます。苦手な方はご注意ください。
また血を吐いた。僕は彼女と一緒に、床に広がった血を拭いた。苦しげな彼女の肩を抱き、ベッドの上にそっと寝かせた。
「そろそろだと思ったんだ。やっぱり、今日はおもてでデートの予定入れなくて良かったね」
「うん……ごめんね、今夜は一緒のベッドで寝れない……」
「何を言うんだい! 僕は君とこうして逢えて、話せるだけでも幸せなんだ!」
「そのうち、でも……血を吐きながらでも『一緒のベッドで眠れる仲』に……」
「ちょちょちょ、ちょっと! まいったなぁもう、君の方から先にそんなこと言われると……」
くすくす微笑う彼女の肌は青白く、ひたいから二本、小さな角が生えている。見るからに亜人の彼女の肩を抱き、僕はまだ鉄臭いくちびるに口づけた。
「いやあ、しかし……種族間の違いとはいえ、やっぱりいまだにちょっと驚くね。生理の血が口から出ると!」
思わず本音を口に出すと、彼女は少し恨めしそうに人間の僕の目を見上げる。おわびのつもりでまた口づけたくちびるは、たまらないほど生々しく、食欲をそそるにおいがした。
(了)