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9.捕獲命令

 今日の角煮が食べたかったと第一声を言うわけにはいかなかった。B-24のミーティングルームで足を組みながらヨルは思った。

 今回の電車内で起きた事件は一般報道されることはないが、遺族や鉄道会社への補填をどうするべきか検討しなければならない。また、辻褄を合わせるためにどういうカバーストーリーを用意する必要があるのか。そのために割く人員はどれだけ必要となるか。

 犯人の確保または処分も同時に行うことになる。周辺の監視カメラの映像を洗って探している為、すぐに見つかるだろう。問題は犯人をいかに穏便に捕まえるか。

 同じような事件を起こされては仕事が増える一方である。

 ノック音がして扉に目を向けるとコウとケイが入室していた。ケイは少し疲弊した表情をみせている。


「隊長、お久しぶりです。お元気でしたか」

「お前のほうは元気じゃないな」


 苦笑いを返すケイとコウは空いてる席を座った。

 電車内での状況説明を求められ、時系列順に話していく。前の車両の異変に気づいてからコウと合流までを彼なりに説明する。このあとに状況報告書を書かねばならず、また同じことを書くように求められる。


「なるほど。ケイは組織的なものか個人的なものかどう思う」


 今回の実行犯の白髪の男がどこかの組織に所属しているのか。それとも何も命令されたわけでもなく行動を起こしたのか。

 ケイは頬杖をついて少しだけ考えてた。


「個人かな。好きでやりましたって感じがした...気がする。隊長はどう思っているんですか」

「ケイは知らない話だが、この前放棄された施設の破壊に行ったんだがそこで自動人形(オートマタ)の襲撃にあった。あれは意図的に配備されたもののだと考えている」


 放棄された施設の調査に向かった職員の話を聞くと、建物内は問題なく侵入でき襲撃されることはなかったらしい。調査隊が去ったあとにわざわざ配備する理由はわからないが、組織的な意図があると考えている。


「球体関節の低レベルな自動人形を持ってる団体は結構ありますね」


 技術面があまりなくても自動人形を暴れさせるだけなら、どこでもできるだろう。


「規模が大きく技術があるという面だけなら“女王の蛇”、“天使の教会”、“蒼月”、“魔術生類総研”と...”そうめん同好会”」


 大真面目にヨルは答えたのだが、2人は最後の候補を聞いて眉をひそめる。別にふざけた回答をしたわけではない。

 そうめん同好会は、そうめん愛好家が科学も魔術もすべて使ってでも最高のそうめんを生み出そうと奮闘している。素材集めや力仕事など人手がいるため、補うために自動人形を使っている。最近では自動人形たちにもそうめんの素晴らしさを知ってほしいと、改良をし始めているという噂もある。ただし、彼らに今回の事件を起こす動機がない。


「あり得そうなのはさっき上げた中なら最初の3つですね。どれが敵対しても面倒であることは変わりないですよ」


 髪を掻きながらケイはぼやいた。最初にあげた3つは目的のために過激な手段を用いる団体で、敵対し制圧する場合は殺し合いになる可能性が高い。

 3人がそれぞれ考えていると、部屋に備え付けられた電話が鳴る。隊長が受話器をとると女性の声で話しかけられる。

 調査隊所属のハルだ。リュウジの部下にあたる女性である。


「ヨル隊長、今回の犯人を監視カメラで確認できました。そちらの部屋のモニターに映します」


 遠隔操作でモニターが1枚の写真を映し出す。線路内を歩いている白い髪の男が映っている。ケイが不快なものを見たと顔を手で覆って表現した。


「あと、監視カメラで現在値を捕捉できています。そちらも表示します」


 モニターを二分割して監視カメラ映像も映してくれた。公園と思わしき場所のベンチでふんぞり返って座っている。

 態度が大きいことにコウは、少し呆れた。

 しばらく無言で見つめていると、電話越しにハルが現在どこの公園にいるか説明してくれる。ここから遠くはない森林公園だった。


「調査隊は監視カメラでの捕捉のみでいい。あとはこちらで対処する」


 一方的に命令して受話器を下ろした。自分達が駆り出されると悟った2人は大きなため息をついた。


「決行は1時間後だ」


 時計を見ると現在16時半を指していた。


「今回は生け捕りにしてもらう。ケイは狙撃ポイントで、コウが接触することになるが大丈夫か」

「あの程度ならね。問題はその公園、狙撃できる場所1箇所しかないでしょ。無理だったらどーすんの」


 ヘラヘラ笑うコウに対して隊長とケイは即答する。


「1人で、頑張れ」


 言われた方は渋い顔で返事を返した。

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