わかったこと
人の数だけ物語があり 人は全てその紡ぎ手だ
今日の夕暮れ 混み合う電車に乗る人も
スーパーで買い物を選んでいる人も
誰かの人生に出演したのは一瞬でも
その人の人生では その人の上がらない舞台はない
その人がいなければはじまらない
誕生から死までずっと出ずっぱり
たとえば
大切な人を亡くして 自分の生きる役を失ったと感じていた日々があった
役目を失い これからは
ただ息をしているだけだと 生き延びているだけだと
本当にそう信じていた
そんな日がたとえ数年続いても
振り返れば
自分の上がる舞台はなくなったと信じた数年があっただけで
ベッドの上の私 だったり
鍵をかけた部屋の中の私という場面になっても
私がいない幕はなく
思い出を見つめ続けているという主役
ずっと自分の主役を演じていたのだった
「そこに私の役がないと思う私」
の舞台がそこに続いていた
そう そして
そんな主役は嫌だと
思う私がいただけ
もがき 出ようとし続けていた
私はそこにいた
振り返って 描き出すのも私
振り返るたびに少しづつ見えるものが違う
ここにいる私は 次の瞬間には どんどん変わる
この世の生に同じ話は二つない
どこにも 一人も 脇役なんていない