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好きな人(婚約者)に冷たくなる呪いのせいで婚約解消されました。でも私まだ諦められそうにありません。  作者: 藤白りょう


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20/26

あなたと最後のダンスを

 


 フロレーラとのファーストダンスを終えたテオドールはそのあと、数人の女子生徒とダンスを踊っていた。

 舞踏会のパートナーにフロレーラを選んだテオドールだが、未だ新しい婚約者は決まっていない優良物件でもあるので少しでもお近づきになりたい女子生徒が次々と彼にダンスを申し込んでいる。


 一応事前にダンスを申し込んでいたヴェネットは律儀なテオドールなら、1曲くらい踊ってくれるかもしれないと期待して待っていた。

 しかし彼は一向にヴェネットのもとには来てくれなかった。


 途中、ヴェネットも何人かの男子生徒にダンスに誘われたが、もし他の人と踊っているあいだにテオドールが来てしまったら踊れなくなってしまうと思いすべて断った。



 結局テオドールが誘いにこないまま、舞踏会の前半が終わり、音楽がゆったりとしたものにかわる。中央で踊っていた生徒も各々、休憩しに飲食スペースに移動したり、友人たちと集まり歓談したりしている。


 この休憩を挟んで後半、ダンスできるのは数曲程度だろう。


 何人かと踊ったテオドールは今は学友やフロレーラたちと談笑していた。



(やっぱり嫌っている元婚約者とダンスなんて嫌だよね…)


 優しいテオドールならもしかして…と期待していたヴェネットは肩を落とす。


(もう、諦めようかな…………でも…)



 ヴェネットは学園に入学してまもなく卒業舞踏会の存在を知ってから、その時はテオドールと一緒に踊りたいと密かに願っていた。

 その頃のヴェネットは最愛の人に嫌われるという呪いのせいでテオドールに対してひどく冷たい態度をとっていて、彼の誘いはほとんど断っていた。だから、いつか呪いの影響を受けずに大好きなテオドールとダンスができたらどんなに嬉しいだろうといつも想像していた。


 今日を逃せばもうその願いは叶わないだろう。


 休憩時間が終わりに近づいた頃、ヴェネットは心を決めて、足を進める。向かうのは歓談中のテオドールのところだ。



「テオドール様。次の曲、よかったら踊ってくださらない?」


 意識して笑顔をつくり、手を差し出した。それでも緊張で手が小刻みに震えてしまう。


(断られるかな…お願いっ…)



「……ああ、いいよ」

 テオドールは一瞬驚いたようにヴェネットを見たが、すぐにその手を取ってくれた。


(嬉しい…)


 舞踏会の後半が始まり、ふたりはそのままダンスフロアへむかう。


「ありがとう。この舞踏会であなたと踊ることができてとても嬉しいわ」

「……そうか」


 ダンスフロアの中央でヴェネットとテオドールは踊り始めた。


(な、何か会話…)

「あ、ダンス久しぶりだね」


「…以前は僕がどんなに誘っても君は踊ってくれなかったからね」


「ご、ごめんなさい」

(しまった、完全に話題を間違えたわ)


 過去、呪いの影響でテオドールに冷たかったヴェネットは彼と夜会に行ってもダンスを拒否していた。


「いや。もう過去のことだ」

「………」


 音楽に合わせて2人はステップを踏んでいく。視線は合わないけど、テオドールはヴェネットが踊りやすいようにうまくリードしてくれている。



 大好きなテオドールが手を伸ばせばすぐ触れられるくらい近くにいる。それだけでドキドキして、嬉しくて。自分はまだこんなに彼のことが好きなんだと改めて思った。


(どうやったら、諦められるの…)


 このままこの時間が永遠に続けばいいのにとヴェネットは思った。


 やがて曲が終わり、2人の足も止まった。


「それじゃあ」


(まだ終わりたくない)

「あ、待って。テオドール様、踊ってくれてありがとう。楽しかった」


「…ああ」


 まだテオドールと話していたくて、一緒にいたくてヴェネットは何か話題がないかと必死に考える。

 しかしこういうときに限って何も思い浮かばない。


「テオドール様ー」


 ホールの端からパートナーのフロレーラが近づいてきた。

 ダンスが終わったのに元婚約者と話し続けるテオドールのことが気になっているのだろう。


「…それじゃあ、僕は行くね」


 フロレーラの方へ戻ろうとしたテオドールの服の端を反射的にきゅっと掴む。


「ヴェネット嬢…?」


「あ…テオドール様……ずっと、すっ…ゴホッ…ステッキ…です」


「ステッキ?」


「いえ、なんでもありません。ありがとうございました」


 じわっと涙が浮かんできてヴェネットは急いでその場を離れた。


 最後にダンスが踊れた嬉しさよりも、もうテオドールに会うことが難しくなる寂しさの方が強かった。




 ヴェネットはそのまま人気のないバルコニーまでやってきた。今日は雲のない夜空で星も月も綺麗なはずなのに、すべてが滲んで見える。溢れる涙をひとり拭った。



「ヴェネット嬢…大丈夫か?」


 振り返るとオーランドが立っていた。





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