雨男:竹中聡
あれは、小学校に上がる前だったのかそれよりもっと前なのか、その時のことをはっきりとは覚えているわけではない。
だが、確かにあの時誰かに出会ったはずだ。
それからだ僕の人生が変わったのは。
「おい聡、お前絶対喜ぶんじゃねえぞ。」
「お前のせいでこっちは迷惑してんだよ」
「そうそう、お前がどうしようもないくらいの"雨男"なんだからさ」
そう僕、竹中聡はいわゆる"雨男" だ。
それも、出かけたときに雨が多いとかというレベルでは収まらない。ふと、気がついたら喜ぶと雨が降るようになっていた。
小学生の頃にはそうなっていて入学式は大雨だったと親に言われている。
高校2年生となった今まで、すべての学校行事は雨、家族旅行も雨、テストの点数が良くても雨、終いには朝の星座占いが一位になるだけでも雨が降る。
小学生の頃は雨が多い学年ね、と言われるぐらいで済んでいたのだが、中学、高校と同じ学校に通ってる奴らからお前と出かけると大体雨降るよなと言われ、自分が雨男であることを自覚した。
そこから意識してみると、自分の嬉しい、楽しいっていう気持ちの時によく雨が降る事がわかった。
その事を知ってる友人は、揶揄うようにイベントがあるごとに楽しむんじゃねえぞと言ってくるのだ。無理があるだろう。
そもそもなんで僕が喜ぶと雨が降るのかもわかってない。ただ雨男だからという事では説明がつかない。
きっかけなんてものに心当たりもない。この前一生雨に囲まれた思い出が増えていくんだろうか。
そう諦めにも似た感情を抱えたまま普段と変わらない日常を過ごしていた。