「絵本の続きが気になる!」
❄️「冬童話祭2023」参加作品です。
すやすやすや……。
「あら、寝ちゃったわね」
男の子のお母さんは絵本を閉じました。
そして布団を優しく掛け直すと、そっとお部屋を出て行きました。
くーくーくー。
男の子が寝息を立てる音が静かにお部屋に響きます。
「…………ちょおっと、待って!」
突然、誰かが喋りました。
「しっ! うーくん寝てるじゃん!」
鋭く注意する声も聞こえます。
「どうしたんだい、きつねくん」
一体、この声の主たちは誰でしょう。
声のした方を見ると、ベッドサイドの仄かな明かりに照らされて三体のぬいぐるみが見えました。
ちょうどぬいぐるみたちは男の子のすぐ側の棚に飾られていました。
さあ、話を戻して。
きつねくんと呼ばれたぬいぐるみは、うー、と唸っています。
「ネコさんとくまさんは気にならない? 絵本の続き!」
「「続き?」」
ネコさんとくまさんのぬいぐるみは首を傾げます。
男の子はお母さんに絵本を読んでもらっている最中に寝てしまっていました。
でも、男の子はその絵本が大好きなので何度も繰り返し読んでもらっているんです。
だから、ネコさんとくまさんにとっては馴染みのお話でした。
けれど、つい最近この家にやって来たきつねくんのぬいぐるみは、絵本の続きを知りません。
だからモヤモヤしてるのです。
「だって、桃太郎がお供にした動物が犬と猿の所でうーくん寝ちゃったじゃん。後一匹、誰か分からないじゃん!」
「あら。だって最後の一匹なんて決まってるわよ?」
「え、誰なの!?」
きつねくんのぬいぐるみは興味津々です。
「最後の一匹はき」
「きつねだよ」
突然くまさんのぬいぐるみがにやにや笑いながら言いました。
驚いたのはネコさんのぬいぐるみです。
しっぽをピン! と立てて言います。
「ちょっとくまさん! 違うわよ。最後の一匹は雉でしょ?」
「ちょっとした意地悪さ。きつねくんは信じ込んでるよ?」
「え」
ネコさんのぬいぐるみが隣を見ると、きつねくんのぬいぐるみが目をキラキラさせています。
「そうなんだ! きつねが桃太郎では活躍するんだね! 何だか嬉しい~」
「ああ、もう知らないわよ」
ネコさんのぬいぐるみは頭を抱えました。
これはどんなに言ってもきつねくんのぬいぐるみは信じてくれそうにありません。
くまさんはまだ笑っています。
そんな後日。
最後まで桃太郎を聞くとことが出来たきつねくんのぬいぐるみはと言うと。
男の子が寝た後で大変ショックを受けていました。
そして。
「う~、おはよう、おかあさん。……あれ、くまさんのぬいぐるみが落ちてる」
男の子が落ちてたくまさんのぬいぐるみを拾い上げて、不思議そうに棚に戻しました。
皆さんは解りましたか?
きっと、怒ったきつねくんのぬいぐるみの仕業でしょう。
嘘はいけませんね。
《おわり》
お読み下さり、本当にありがとうございます。