薬
読んで戴けたら嬉しいです。(人´▽`*)♪
うっすらと目を覚ますと、ばあちゃんが心配そうにボクの顔を覗き込んでいた。
ボクは飛び起きた。
「夜戯は?! 」
「大丈夫だよ
あの娘なら茶の間のソファでうたた寝してる
紗月を軽々と抱き上げて運んでくれたんだよ
倒れるなんて、いったいどうしたの? 」
ばあちゃんは少し怖い顔で言う。
ボクはできるだけ悟られない様に、明るくなり過ぎないよう努めて微笑み、肩を竦めながら言った。
「ここんとこよく眠れなくてさ
夕べは色々あって寝て無くて、このざまだよ」
「色々あったのはあの娘のせいかい?
あの娘、人間じゃないね
アンドロイドなんて今の時代、珍しいよ」
ボクは言った。
「彼女、女神なんだ」
ばあちゃんは目を丸くする。
「女神ってアンドロイドの反乱を止めたあの女神? 」
ボクは頷いた。
「そんな有名人となんでまた、こんな処へ? 」
「その話は話し出すと長いんだよお」
ボクは眉を下げる。
ばあちゃんは歯を見せて笑った。
こうゆう時のばあちゃんは凄く敏感で、繊細にボクの状況を理解してくれる。
「要するに訊かれたく無いんだね
解ったよ、じゃあアタシは何も訊かない
その代わり困った事が在ったら言っておくれね」
ばあちゃんは皺だらけの目尻を下げて、ボクの手を握り二三度ぽんぽんと叩いて、部屋を出て行った。
そしてボクの意識はまた途切れた。
ボクは気絶するみたいに眠ってしまったようだ。
どれくらいの時間が経っただろうか、腕に痛みを感じて目を覚ました。
「起こしたか? 」
夜戯が布団の傍に座っていた。
手には注射器を持っている。
「どうしたの、それ?! 」
驚いたボクが起き上がろうとすると夜戯は慌ててボクの口に手を当てて小声で怒鳴った。
「大きな声を出すな!
ばあちゃんが起きてしまうではないか! 」
「もんんんんん·············」
ボクが大人しくなると夜戯はそっと手を外した。
「ちょっと隣街の総合病院から拝借して来たのだ」
ボクは再び驚いて言った。
「拝借って?! 」
夜戯はまたボクの口を手で押さえる。
「だから、大声を出すな! 」
ボクはコクコク頷く。
なんだかボクは既にこの人の尻に敷かれてる気がする。
「今薬を射った
少しすれば楽になる筈だ
ただ症状を抑えるだけだから、治す事はできない」
どう考えてもこれって、かっぱらって来てるよね。
どうやって病院に入ったの?
いや、考えたくない···········。
夜戯はドヤ顔で言った。
勿論小声で。
「心配するな、足は付かないように充分配慮した」
「どうゆう配慮だよ! 」
「なかなかスリルがあって面白かったぞ」
表情が妙に清々しい。
ボクは呆れて言葉が出なくなった。
次の日の朝、案の定ローカルテレビ番組では病院に泥棒が入ったと大騒ぎだった。
夜戯を見た。
「物騒な世の中だ」
なんて言って、実に白々しい。
この人、実は泥棒の素質があるのかも·········?
読んで戴き有り難うございます❗゜+.゜(´▽`人)゜+.゜
月の恋人シリーズは人外×人間の恋を描いているのですが、だからジャンルはローファンタジーに設定しています。
今回―アンドロイド―はローファンタジーじゃ、なんか違う気がしましたので、あとSFと呼ぶのはおこがましい気がしたので、現実恋愛にしました。