お憑き様 1
初投稿になります。どうぞよろしくお願いします。
「瀬戸柚樹22歳、身長176センチ体重62キロ。」
「18歳で警察官になり20歳で生まれ育った故郷の島の交番に移動…」
聞き覚えの無い声が部屋に響き私は目を覚ました。
「おや、目を覚ましたか、気分はどうだい?」
冴えない頭とぼやける視界の中でそれが自分に向けられた言葉だと気付く。それにここは何処なのだろう、今話しているこのいけ好かないチャラい男は誰だ。
「質問に質問で返されるのはあまり好きじゃないんだけどなぁ。だが最初だ、お前に合わせてやろうじゃないか。」
この男は何を言っているんだ?まだ私はこの男には何も話していないはずだ。私はそこまで顔に出るタイプではないと思うし、今は表情すら変えられない。
「おしゃべりな野郎だ。質問なら一つずつにしてくれ。」
「まず俺は梅村、ここで研究員をしている。気軽にウメと呼んでくれ。」
「そして、今お前が動けないし声も出せないのは、俺たちがお前を麻酔で拘束しているからだ。」
「最後に、ここは政府直属の研究施設エリュシオン。古代ギリシャ語で神に祝福された人間が死後の生活をおくる場所と言う意味だ。」
研究施設…?なぜそんなところに私が?何の研究を、政府直属で?それに…死後の生活を送る場所…?
「単刀直入に言いってやろう。お前は一度死んだ。そして蘇ったのだよ、お憑き様によって。」
……何を言っているんだこいつは。タチの悪いテレビ番組か何かか?その方が現実味もあるだろう。だが、テレビ番組がこんなことをして許されるわけがない。ならこいつの言っていることは…
「本当のことだ。俺は冗談は好きでも嘘はつかない。」
まただ、この男はまるで私の考えていることが分かるような喋り方をする。
「う…あぁ、あ」
声がだんだん出るようになってきている。
「もう話せるようになってきたか、思ったより早かったな。」
「なんで…さっきから私の考えていることが…分かる、」
「さあな、最初から自分の手の内を明かす程俺はバカじゃあない。それに、お喋りはもう終わりだ。じきに所長が来る。」
「しょちょう…?」
誰のことだと考えているうちに右の方から扉の開く音がし2人分の足音が部屋に響いた。
「ウメ起きているなら早く連絡をよこせ、いつも言っているはずだ報連相ぐらいまともにしろ。」
聞いたことの無い声が部屋に反響する。その声は透き通るように綺麗だがそこら中に刺を生やしているようだった。
読んでくださりありごとうございます。
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