表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

交流会で肝試し

 入学式が終わってから1週間が経った。1週間も経つと、どのクラスも賑やかだ。だが、ひかりはとても疲れている様子だ。

「ひかり、どうしたの?そんな疲れたって顔をして」

そんなひかりに声をかけたのは、ひかりの友達である、宮野葵だった。

「葵?あーいや、ちょっとね」

「あっ、まさか、さっき話してた肝試しが怖いの?」

「こ、怖くないよ!」

実は、さっきのホームルームの後、先生が教室を出てから話になった、みんなと交流を深めるために今日の夜、肝試しをしようとなったのだ。もちろん、全員参加だ。だが、ただの肝試しならよかったものの、場所が近くにある霊宝山だということが問題なのだ。

(なんでよりにもよって山でやるのよ…。)

夜の山は、霊が集まりやすいのだ。

(なんで、こんなことに…。でも、静音に御幣をもらってて良かった。もしもの時は、あれでどうにかしないと。でも、札がないから、家に帰ったら作らないと。)

札とは、お祓いの時に使う道具の一つだ。

「ひかりって、お化けとか怖いんだ〜!」

「だ、だから違うって!」

「え、白石肝試し行きたくないの?」

急に違う声が聞こえて、ひかりも葵も驚いた。

声の主は肝試しをしようと言い出した、瀬戸悠一だ。

「だ、だから怖くないって!瀬戸君までそう言わないでよ〜」

「あ、そうなの?なら良かった。白石は引っ越して来たから、ちょっとでもみんなと仲良くなって欲しかったから言ったからさ。」

「そ、そうだったの?ありがとう!」

「ほんとかな〜?」

「おい、宮野!」

「あはは、ごめんごめん。」

「二人って仲がいいんだね。」

「そりゃ、幼稚園から一緒だからねー。」

「こいつ、幼稚園の頃はずっと泣いてばっかだったからな。」

「ちよっ、ひかりに変なこと言わないでよ!」

「あはははは。」

「ひかり、そこ笑わないっ!」

「それじゃ、7時に霊宝山の近くのコンビニで。」

「わかった!」

「りょうかいー!」


そうして、7時になった。みんなは霊宝山の近くのコンビニに集まっていた。

「後は、あ、来た来た。瀬戸ー!あんたで最後よ!」

葵は大きい声で言った。

「わりぃわりぃ、待たせたな。じゃ、始めますか。」

「遅れときながら、仕切るのはあんたなんだ…。」

「んじゃ、このくじをみんな引いてくれ。ちゃんと人数分あるはずだけど、足りなかったら、言ってくれる。」

「「「「はーい!」」」」

みんながくじを引き終わった。私は、瀬戸君と、葵はクラスメイトの野山君とだった。

「げ、野山か…。」

「なんでそんな嫌そうなわけ?」

「いやいや、嫌じゃないよ!」

「私は、瀬戸君とか。……周りの視線が痛いのは放っておこ。」

「よろしくな、白石。」

「うん。」

「じゃ、書かれてる番号順に、頂上にある神社にお菓子を置いてきて、別ルートで帰ってくる。そんで、最初の奴が行ってから5分後に次の奴が行く。わかったな?」

「「「「はーい!」」」」

そして、肝試しが始まった。私たちは10番目で、葵はその次だ。

45分後、私たちは山に入った。待っている間、30分経つとみんな無事に帰ってきたから、心配は無さそうだけど、念のためひかりは周りを警戒していた。

「白石怖いのか?」

「え、怖くないよ!」

「ならいいんだけど。いや、ここ結構心霊スポットで有名なんだよな。」

「え?」

「まあ、みんな帰ってきてるから大丈夫だろうけどよ!」

「そうだね。」

(心霊スポットで有名か…。どうりで霊気が多いわけだ。でも、これは悪霊じゃないから大丈夫かな。それより問題は、この霊気に隠れている妖気か…。)

「お、見えた。あそこにお菓子を置くんだ。」

「うん。じゃあ、行こうか!」

「おう。にしても、雰囲気すごいな。ほんとに怖くないのか?」

「まあね。瀬野君は?」

「ずっと思ってたんだけど、君はいらないから、瀬野って呼んでくれ。」

「分かった。じゃあ、瀬野は怖くないの?」

「こ、怖くねーよ。」

「あはは。じゃあ、置くね。」

「おう。」

そうして、お菓子を置いたとたん、周りの空気が変わった。妖気が強くなったのだ。

「っ!」

「瀬野っ!」

隣で、瀬野が苦しそうにしているのを見たひかりは、瀬野の名前を呼んだ。この妖気の強さは、霊力がない人間でも感じられる。だが、普段は感じない気配にあたると、立っていられなくなるほどに、頭痛や、吐き気が襲ってくる。

「瀬野!大丈夫?!」

「ああ。…なんともないっ!」

本来なら、立っていられないはずなのに、瀬野はフラフラしながらも、立ってこう言った。

「早く、ここから離れよう。なんだか嫌な感じがする。」

「う、うん。」

すると、誰かの声が聞こえた。

「先ほどから我を弄ぶ愚か者は誰だ」

「なんだ、この声…っ」

「瀬野、大丈夫?」

「なんだ、ただの人間か…。にしては、霊力が強いやつがいるな。」

ひかりは声の主の方に目をやると、そこには二メートルほどの大きさであるキツネの妖、妖狐がいた。

「っ!」

ひかりはこれ以上は無理だと思ったのか、家で作ってきた札を瀬野に見えないように出して、小さく術を唱えた。

「星よ、彼の者を僅かな眠りへと誘え。」

すると、瀬野が倒れるように眠った。

「ほほう、お前巫女か。それも、“あの四家”の」

「よくわかったわね。念のため、これもつけておくか。」

そう言って、ひかりはどこからか、面を取り出し、つけた。

「ほほう、その霊気、お前、星宮か。だがおかしいな。星宮の名は最近聞かなくなったのだが。まあいい。さあ、かかってこい、星宮!」

「そこまでわかっちゃうか。でも、ここで奴を消したら知られないままか。やってやろうじゃない。」

「どこまでできるかな?」

そう言って、妖狐は火を飛ばしてきた。

「この狐火を、人間が防ぐことができるか!」

「舐められたものね。」

そう言って、ひかりは札を取り出して、呪文を唱えた。

「星よ、我らを守れ」

すると、札から四角い壁が作られた。これは、結界だ。

「なっ、なかなかやるな。」

「あら、随分弱いのね。次は私ね。」 

そう言ってひかりは御幣を取り出した。そして、ひかりの目に星が宿った。

「術式 星、展開。」

そう言うと、ひかりの足元が光った。その光は大きい丸の中に星の形が描かれていた。

「星神よ、今こそ汝が力、我に与えよ。宇宙の果てにて星となれ。砕けなさい!星魔 星霊破滅」

「ならなんて力だ...。くそ、敵わない...。」

ひかりが呪文を唱えると、妖狐は光に呑まれて消滅した。

「ふう、どうにかなるものだね...。」

ひかりはそう呟きながら、面を外し、瀬野の方を見た。

「っ!」

すると、瀬野が目を覚ました。

「瀬野、大丈夫?」

「え、白石?あれ、俺、何やって…、あ、なんかすごい嫌な感じがして!て、あれ?何もない?」

「き、急に瀬野が倒れたからびっくりしたよ。大丈夫?」

ひかりは、瀬野に気づかれないように嘘をつく。

「お、おう。じゃあ、下に、降りるか」

「うん。」

瀬野は大丈夫と言っていたが、まだふらついていた。

「ねえ、瀬野。本当に大丈夫?体調悪いの?」

いくら術で眠らせたからと言って、あの妖気に当てられたのだ。しばらくは頭痛や吐き気は治らないだろう。

「っ、やっぱしんどいや。わりぃ。」

そう言って、倒れかけた。それをひかりが支えた。どうやら、意識はあるようだ。

「大丈夫?顔色、すごく悪いよ、?」

「平気、ちょっと休めば良くなるさ。」

「分かった。」

そう言いながら、ひかりは座れそうな場所に移動し、瀬野を座らせた。

しばらくしてから、瀬野が

「よし、もう大丈夫だ。」

と言ったので、二人は集合場所に戻った。その五分後、葵達も降りてきた。


そして、全員無事に帰ってきたので、解散となった。

帰り道、瀬野がひかりに近づき、こっそりと

「さっきはありがとな!」

と言ってそのまま帰っていった。

「こちらこそ。」

その呟きは、誰にも聞こえていなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ