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102.目の前は壮大、そして隣には

 



 まるで夢のような楽しい時間。そんな1日を過ごした翌日、俺達の眼前に広がるのは……


「うおっ!」

「やっぱり高いー!」


 451mから見下ろす、壮大な景色。

 いやぁ昨日は夢の国でウキウキだったけど、今日は今日で壮大な景色にワクワクだぞっ!?


 去年の修学旅行では臨時の工事とかが重なって、ここ東京エアーズタワーには来られなかった。もちろんその代わり行った東京ツリーの高さにも驚いたものの、やはりその違いは明らか。


「本当なら去年来るはずだったのにねぇ」

「まぁな? 試験的に時期早めようってなって9月頭になったものの、工事にぶつかってここ来れないってツイてないよな」


 本来なら毎年10月に予定されている修学旅行。文化祭とかの絡みで試験的に時期を早めてみようと初めて実施されたのが俺達の代だった。まぁ結果はこの通り。でもまぁ夢の国には行けたし、それに……


 でもいつも通りの時期に行ってたら、俺最悪なメンタル状態だったんだよな?


 よくよく考えれば、俺にとっては……良かったのかもしれない。


「うみちゃん? どうかした?」

「ん? いやぁ……色々思うところはあるけど、結局時期早まって良かったなぁって」


「時期…………あっ!」

「まぁおかげでこうして来られたし、しかも湯花と一緒だ。むしろプラスだよ?」

「……うん! 私も嬉しいよ」


「海君、湯花ちゃん? とりあえずここブラブラするとしてさ、他にどこか行きたい場所はある?」


 そんなことを一緒に口にしながら目の前の景色を楽しんでいると、不意に横に居た望さんに声を掛けられる。

 望さんの話だと、余すことなく楽しんでもらおうと思って、帰りの新幹線は最終便の1個前のものを取ってくれたらしい。つまり今のところ午後の予定は空白状態。しかしそんな急に言われても、パッとは思い付かないもの。


「行きたい場所か……」

「行きたい場所ねぇ……」


 どうやら姉ちゃんも同じらしく、姉弟の見事なハモリが響く中……


「あっ! 望さん?」


 それを切り裂いたのは湯花だった。


「おっ、行きたい場所出てきた?」

「うみちゃんも棗さんも特になかったらで良いんですけど……望さんの行ってる鳳瞭大学って、同じ敷地に鳳瞭学園もあるんですよね?」


 ん? 鳳瞭……?


「そうだよ? めちゃくちゃ敷地広いからねぇ」

「私……そこ行ってみたいです! テレビでは見たことあるんですけど、実際にどれだけ凄いのか見てみたくて」


 そっ、そうか! 何も観光地だけじゃないんだよな? 確かに名門校鳳瞭、その歴史と実力と外見はテレビでは何度か見たことある。でもせっかく近くまで来たんだ、可能なら……見てみたい! それこそ体育館とか!


「大学と学園かい?」

「へぇ! 確かに見てみたいかも。デカいんでしょ?」


「ねっ、うみちゃん? 高校王者がどんな場所で練習してるか気にならない?」

「確かに……気になるっ! あっ、でも望さん? 部外者が入っても大丈夫なんですか」

「あぁ、そこは問題ないよ。僕が居るからね? 入り口で簡単な書き物を提出するだけで大丈夫だよ」


「本当ですか!?」

「そこは任せてよ。でも本当に良いのかい?」


 マジ? こういう時に生徒が居るっていいよなぁ! じゃあ……


「もちろん! 俺も行ってみたいです!」

「さんせー」


 決定じゃないですか!?


「了解! じゃあとりあえず午前中はここ見て回ろうか? ショッピングモールもあるし水族館もあるし」

「そうしましょう!」

「はーい」


「じゃあ12時に入り口で待ち合わせということで……行こうか? 棗?」

「はいはい。じゃあ2人共、あとでね?」


 なんか流れるかのように姉ちゃんと2人きりの状況作り出したなぁ。流石だ……けど、望さん? 何度でも言いますよ? 俺味方ですから!


「なんか望さんはもちろんだけど、棗さんも楽しそうだね?」

「まぁ昔から仲良いしな? だからこそ……望さんにとっては根気が必要かな?」


「根気?」

「それこそ親友みたいに仲が良いって関係を、恋人って関係にするには色々と時間がかかりそうじゃないか?」


「んーどうかなぁ?」


 ん?


「どうかなって?」

「そうとは限らないんじゃない? だって……好きになるのなんて一瞬だったよ? 私は……そうだったもん」


 うっ! 笑顔でそんな恥ずかしい言葉良く言えるな!? 出たぞ、唐突な右ストレート! 


「ふとしたキッカケなんだよ? ……うみちゃんっ?」

「なっ!」


 さらに上目遣い!? ……ヤバイ!


「あれ? どしたのかな? 顔が赤く……」

「とにかく! すっ、水族館行こう! ほらっ」

「キャッ! うみちゃん?」


 ダメだダメだ! 危うくまた湯花のペースに乗せられるところだった。でも一瞬かぁ、そう言えば俺も……


 気付いたら湯花のこと意識してたもんなぁ……


「うみちゃん? 手が異常に熱くないですかぁ?」


 うっ! 


「なんか汗も……」


 あぁ、考えるの止め! とっ、とにかく……


「きっ、気のせいだよっ!」

「ふふっ」


 望さんを応援しますっ!




 顔が火照るのを感じながら、誤魔化そうと必死だったのも束の間。一旦その非日常的な光景を目の当たりにすると、そんな感情はどこへやら。

 都心の真ん中にあるとは思えない水族館の迫力と、ロマンティックなクラゲにチンアナゴ達の展示に癒され……ここでしか食べられない限定スイーツに舌鼓を打ち、ここでしか買えない限定グッズに目を奪われる。


 夢の国に負けないくらい楽しんで、笑って、はしゃぎ過ぎて……それだけ湯花と過ごす時間は幸せだったんだ。けど、時間はあっという間で……姉ちゃんから怒りの電話が来た時は焦ったよ。

 とまぁそんなトラブルもあったけどさ? 無事に望さんに連れられて、


 その時は…………ついに訪れる。




「でっ、でかい……」

「凄いねぇ……」

「黒前もキャンパス内は広いと思ってたけど、さすが名門。外見からでもそのヤバさがわかるわぁ」


 目の前に広がる建物。それは紛れもなく画面越しでしか見たことのなかった鳳瞭の姿。そう、俺達はついに名門鳳瞭に足を踏み入れようとしていた。


「そうかなぁ、すぐに慣れるよ? おっと、それじゃ……棗、海君、湯花ちゃん?」




「ようこそ、鳳瞭大学へ」




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