101.5.夢の国(延長戦)
「さて皆、楽しんでくれたかな?」
「はぁー、最高っ! 乗りに乗りまくったからねぇ」
「俺達も楽しかったです」
「本当にありがとうございます、望さん」
「それは良かったぁ!」
「んでノゾ? ホテルってここから近いの?」
「近いも何も……この辺りにあるよ?」
ん? この辺り?
「こっ、この辺りですか?」
「望さん? デデリーランドの入り口前ですけど?」
「うん、てかもう見えてるよ?」
見えてるって……まさかっ!
「おっ? ノゾもしかしてオフィシャルホテル!?」
「正解ー!」
マッ、マジかよ? マジですか!?
「えぇ! いいんですか!?」
「勿論だよ! 湯花ちゃん」
「やるじゃんノゾ」
望さん……本当にすごいな?
「あっ、でもさ? 1つだけ問題があってね?」
「ん? 問題?」
「実は……」
「うわぁ! 広い!」
目の前に広がる部屋は想像よりも広く、そして……
「湯花、これダブルベッドより大きくね?」
目を見張るのは、その存在感をいかんなく放つ大きなベッド。
「ははっ……ねぇうみちゃん? 本当に良いのかな?」
そしてそれを目にした瞬間、湯花が苦笑いを浮かべる理由は……すぐに察することが出来た。
「まぁ、仕方ないだろ? それに望さんが色々手配してくれたし、姉ちゃんもそこまで抵抗あるって感じじゃなかったしな?」
オフィシャルホテルに泊まれる……その言葉に浮かれてたのも束の間、次に望さんの口から飛び出したのは、
『意外と混んでてさ? 部屋2部屋しか取れなかったんだよね?』
まぁ、この時期にオフィシャルホテルに泊まれるだけでもありがたいし、そこは良かったんだ。まぁ俺と望さんが一緒の部屋だろうなぁなんて思ってたんだよ。
『そこでさ? どうせなら海君と湯花ちゃん一緒の部屋が良いよね?』
その一言が出るまではね?
俺達だって最初は遠慮したぞ? けど、望さんの気持ちを考えるとそこまで強く抵抗できなかったのも事実。それに……
『まっ、私は別に良いよ。それに海達は一緒の方が良いでしょ? 懐かしいなぁ、昔は良くお泊りもしたたもんね? ちょっと思い出に浸るもありかもな』
なんて姉ちゃんも言うもんだから、あれよあれよと部屋割り決定。まぁ俺としては……最高なんですけどね?
「そうだよね。なんか思い出に浸るって言ってたもんね?」
「まぁな」
思い出って……最終的に俺達は良いですけど、望さん? その姉ちゃんの発言はある意味キツくないっすか。なんか男として見られてないような……いや、望さんはあんな厳しい条件の元、見事姉ちゃんとのデートをゲットしたんだ。何かしら考えてるに違いない! 俺は心から応援してますよ? 望さん!
「ふふっ、うみちゃん。まさか一緒の部屋に泊まれるなんて思いもしなかったよ?」
「俺もだ。けど、その分一緒の時間増えて嬉しいぞ?」
っと、人の応援してる場合じゃないかもしれないな? 俺は俺でこの幸せタイムを堪能しないと……
「私もだよ? ホントに嬉しい……」
うっ! 可愛いすぎかよ? えっと……うん、焦るな? まだ夜は長いことだし……そうだ!
「だよな? あー、えっと湯花? とりあえずさ?」
「ん?」
「おっ、お風呂入ろうぜ?」
「……うんっ」
「2人で……入ろっ?」
――――――――――――
ん……
ふと目を覚ますと、目の前はまだぼやけていた。何度か瞬きをしていく内にそれも鮮明になり、次第に布団やどこか温かい感覚が……それぞれ体の半身を包み込む。
あれ? 目覚まし鳴る前に起きたのか?
そっと視線を動かすと午前5時。だいぶ早い目覚めにもう一眠りでもしようかと思っていると、視線に映ったのは……俺の腕を枕に寝ている湯花だった。
寝顔可愛いな。しかもやばっ、昨日あのまま寝たから……
その体温が直に肌に触れて、いつも以上に温かい。そして研ぎ澄まされる感覚は、その柔らかさを無視するわけがなかった。
うっ……朝からヤバいな。でも仕方ないよな? それに……
俺はそっと顔を近づけると、優しく唇に触れる。柔らかくて心地良い感触は朝一でも健在だった。
「ん……うみちゃん?」
あっ、やべ……起こしたか?
「ごめん、起こしちゃった?」
「大……丈夫。それより……今キス……」
「いやぁ、寝顔も可愛くてさ?」
「ふふっ、嬉しい。でもね……足りないっ」
「んっ!」
今まさに起きたばかりの湯花に、俺は完全に油断していた。気が付けば、顔を引き寄せられ……
「ん……んっ」
またしても唇を重ね合わせていたのだから。
「昨日は張り切り過ぎたけど……寝たらリセットだよね?」
「まぁな? 湯花?」
「うん?」
「箱の中にあと1つだけ残ってるんだけど……」
「そうなの? てっきり2箱使っちゃったのかと……でもそっかぁ残ってるんだね?」
「みたいだな? 俺も気付かなかった」
「ふふっ、ねぇうみちゃん……」
「来て?」
 




