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いきなりなんだよ
使いづらいじゃないか
せめて文字はもっと大きくしてくれよ
目がしぱしぱしてしょうがないよ
強い風が吹いている
暑さ寒さもどうでもよい社会不適合者
そろそろ労働せねばならない
腰が重い
そのうえ痛い
もうすぐ季節は変わるらしい
別の名前が欲しい
自分で考えるのじゃなく誰かが付けてくれるやつ
言葉を操り出し、何らかのカタチを現すことに面白味を見出したことがある
頭の中にあるだけなら存在していないも同じ
文字にでもしたためて紙面にまき散らしたとしても、まだ存在しているとは言えない
自分以外の誰か一人にでも知られたら、それでやっとこ存在したことになる
この理屈を、いつかは面白くて仕方がないものと思い、いつかは煩わしくて仕方がないものと思う
また川べりを歩いている
ドブ川ではないが、澄んでいるわけでもない
川幅10メートルほどの浅い川
護岸は比較的新しいコンクリートで固められ
川へ降りる幅広の階段などもあるが
下まで降りて川を眺める者はいても
足を入れる者はいない
鴨ばかりは中州の上で満足そうに寛いでいる
清流であれば清涼な気分にでもなるものなのか
川底に沈んだ缶やビニル袋がよく見える
微妙に淀んだ川とそっくり似た気分で歩く川べりの道
土の上に白いパチンコ玉のような砂利が撒かれた道
砂利の量が中途半端なのか、雨で流れてしまったのか
所々土の地面が見えている
歩くほどにじゃくじゃくと独特な音がして
飾りのない黒い靴は赤茶色く汚れていく
親戚方との折り合いがよくない
年に数度あるかないかの集まりが苦くて仕様がない
こちらが苦く思っているように
あちらも苦く思っていることだろう
相性というものは残酷なもので
絶望的に合わないというのはお互いにどうしようもない
家に留まっていては胸は悪くなるばかりである
勝手知ったる地元であればどこへでも逃げられようが
残念ながらこちらが呼ばれている身である
俗に言う僻地というやつで、限界集落というやつでもある
個人的な知り合いもなければ馴染みの店もない
バスは通っているが、どこまで行こうとも
気の利いた喫茶も娯楽もない
あるのは淀んだ川と山と骨董のような形ばかりとなった商店街
一つ二つ営業している店はあるが
日用品か仏具の店か、開いているのか潰れているのかわからないスナックばかり
山野は豊かなことは豊かだが
とある震災が起こってからは迂闊に入ることができなくなった
昔よく行った山の上の公園は
随分前に首括りがあったとかで
無邪気に遊びに行く気には到底ならない
面白いほどに苦いばかりの場所である
大嫌いだったよ
今は呑気に復讐してる
文字のカタチにして
誰が読んでも嫌な気分にしかならないひどいやつ
言ってもすぐに忘れるのだろうから
言ったそばから消えるのじゃない
いつまでだって残るカタチで残しておくよ
カーテンの隙間が薄紫色に光っている
開ければさぞすごい夕焼け雲が広がっていることだろう




