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呼応  作者: はじめ
29/40

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桜が満開、とのことである。

もうそんな時期だったかと考えて、いやどうも早いようじゃないかと思い直す。

よくよくニュースを聞いてみれば、やはり今年は早いと言っている。

やはり早いのだ、と納得して、もう一度、早いのか、と思い直した。



あっこの神社の桜は今年もおんなしように咲いているかしら

去年はふくふくと おしろい粉とおんなし色して そよいでいたが

一昨年は水気に浸って青ざめて うっすらうすけていたっけが

今年もおんなしように 別の顔して咲いているかしら



冬が去るのは心寂しく名残惜しいものですよ

春が来るのは煩わしく落ち着かないものですよ

来てしまうものは仕様がないですよ

来たら色めき立つのも仕様がないですよ

空気がぬるんであの匂いが鼻孔から来るんですよ

水っぽい動植物の細胞の匂いですよ

そしたら細胞が溶けるんですよ

いやだいやだ

敷き詰められた細胞壁が弛んでぐずぐず

いろんな液を滲みだして

どんどん弛んで溶けていく

管を通って髄を伝って

頭の先から全部の末端まで

ぬるんだ空気と一緒になって溶けていく

いやだいやだ

喉の奥に埋めてあった

言わずにおいてもいいことを

言ったりしたりして

言ってから焦ってみたりする

いやだいやだ

それで余計にいろんな液を滲みだして

ぬるむどころか熱まで発していよいよどろどろに

わけのわからないものになっていく

いやだいやだ

私はもっと せいせいとして氷柱のように下がっていたい

しれっと静かに飄々として 月など眺めていたい

いやだいやだ

もう今から いんやもっと前から

随分色めき立っている


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