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先日 遅い初詣 人気の少なく 天気も良くて 引き当てましたるおみくじは
褐色の明朝体で 小吉 とのたまう 何を正月から 小吉とは 無粋興ざめ 最早
いくらか抱えたやる気も活気もからっきし 境内も打って変わってうら寂しく
がらんどう 伽藍堂 ここは神社で伽藍はありませんけどね と嘯いて 踵を
平坦に敷かれた参道の石にこすりつけてから くるりと返して 今日は
幾分 日が悪かったのだと 気を取り直して 縁起も何も 薄っぺら
沸き上る 松焚の残煙 喉にまとわりむせて いよいよ御屠蘇気分も千々に粉々
逃げ出すように 立ち去る境内 鳥居は赤く大きく 天気は良くて 空は青い
ならばと別日 神社を探してあちこちと 気を持ち直して 以前の小吉は昇華
流浪の後に 定めた神社で 引き当てましたるおみくじは 因果も因果な
当然憮然 小吉 と出ましたもので 放り投げるのを堪えに堪えて握り込み 心底
厭になる 運やら星の巡りやら どうにもならん 全てのガチャの
因縁 定め 宿命 運命 天候 時候 地形 姿容 その他諸々 全てを呪い
世の無常を嘆きつつ 長い石畳を かくんかくんと膝折り落ちる 不孝者
涅槃と聞いて俄かに惹かれる単細胞 神もまた人の紡いだ御伽の内の帰り道
しかして陽はまた昇り繰り返す 取るに足らない戯言と 晴れた空の流れ雲