24/40
24
私の部屋にはサメが飛んでいる。
海面の獲物をパクリとやるために
海中へ深く潜って下から獲物めがけて
いっぺんに飛び上がる。
エアジョーズと呼ばれたりするあれです。
口をなるたけ大きく開いて
海面のぎりぎりまで獲物を見つめて
いよいよ飛び出すというときには
ぎゅっと目をつむるのです。
一節には目を獲物の抵抗から守るためとか
水の抵抗を受けるのを避けるためとか
言われているようですが
私の部屋のサメは目をつむらない。
つぶらに開いた黒目のまま
天空を向いて飛んでいる。
正確には壁のフックに垂らした紐に
胴体を釣られて飛んでいる。
最も省スペースな飾られ方で
落ちることないエアジョーズ。
フェルトの歯列と
化繊のモフみのエアジョーズ。
枕に頭を乗せて見上げれば
サメの尾ヒレに手が届く。
ぎゅっと掴んで
閉じない瞳の代わりに目を閉じる。
すると朝は一瞬のうちにやってくるが
次の瞬間には夜に落ちている。