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呼応  作者: はじめ
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カバンに付けようと思って

だるまのキーホルダーを買った

髭の生えた荒々しいやつでなく

姫だるまというかわいらしいやつだ


だるまはきれいに塗装されてはいたが

カバンに付けて日々振り回していたら

模様も色も早々に剥げ落ちてしまうのではないかと思われた

プラスチック コーティング と検索をかけると

スプレーやら得体の知れない液体やらの情報が並べられた

いくつかのやり方を検討した末に

レジンでコーティングする方法が最も安価で

技術も道具もない自分にも簡単にこなせるだろうと目星をつけた

レジンというものは紫外線のライトをあてて硬化させる必要があるのだが

紫外線ライトはたまたま持っているものがあったので

準備という準備はレジン液を買うだけで済んだ


手順という手順はあってないようなもので

手袋と換気など用心するべきところを用心したら

あとはレジンを薄く塗ってライトで硬化させるを繰り返すだけでよい

マニキュアによく似た形状のハケで 二度三度と液を塗り重ねると

だるまは無事透明のつるつるした鎧に包まれた

ついでに金具部分にも補強になるだろうと塗りこめた

これでだるまは多少擦れたりぶつかったりしたとしても

硬化したレジンの殻が僅かに傷つく程度で

時々補強のために塗り直しをするくらいの手間で

ほとんど永遠に新品同様の色模様のまま

白い顔にくっきり通った目鼻立ちで

にこにこと微笑み続けてくれることだろう


と思われたが

どうやら紫外線ライトの出力が十分ではなかったようで

いまひとつ硬化の足りないだるまは

指で触れると指紋が付くほどではないものの

ぺたりと貼り付いてくるような

お世辞にも丈夫とは言えない仕上がりになってしまった


私の所持している紫外線ライトはペンタイプの小さなもので

本来ならレジン硬化に使用するものではないから

原因はそれだろうと思われる

本来何に使用するライトかというと

蛍光する鉱物(うちの場合は蛍石という鉱物)にあてて

青く発光する様を愛でるために使われるものなのだ

だから大きさから言っても光量から言っても

レジンを硬化させるに十分でなかったのだろう

実のところあれこれ検索する中で

こうなるかもしれないとは思っていた

効果が十分でないなら十分なものを新たに買えば済む話だけれども

そうはしなかった

なぜならここには既に一つ紫外線を発するライトがある

仕様が違うとはいえ

もう一つ別に購入する必要がはたして本当にあるのかどうか

レジンで爪の彩色に凝るでもなく

レジンで造形物を作る趣味もなく

部分的に肌を日焼けさせたいわけでもない

他に自主的に紫外線を発生させたいイベントは思いつかない

だるまを丈夫にする以外何もない

そんな奴が紫外線を発するライトを二つも所持しているというのは

どうも道理が合わないのではないか

もしくは

そんな奴が紫外線を発するライトを二つも所持しているという可笑しみを

敢えて狙いにいってみるという考え方もあるが

そんなしょうもないことに気が付く奴が

気が付いたとして指摘してくる奴が

はたしているだろうか

いやいない


というわけでだるまは今

おそらくレジンを扱おうとした俄かレジンヤーの多くがそうするように

カーテンの向こうの窓際で

朝日に触れるのを待っている

白い顔にくっきり通った目鼻立ちで

にこにこしながら待っている

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