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呼応  作者: はじめ
21/40

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寒い朝

薄日差すアパートの階段に

トンボが一つ落ちていた

一番下の一段の

そこだけ苔色剥げた真ん中に

トンボが一つ落ちていた

髪の毛ほどの細い縁で区切られた

四つの翅の一欠けも

一つの破れも見当たらず

淡い黄色の薄光線を

四つの翅で 余すことなく照らして見せるのに

その一枚だってかさりともせず

ぱたりともせず

まるで置物か胸飾りの頑固者

ただ階段の一段の真ん中に

トンボは一つ落ちていた


指で翅の一つを押さえてやるが

それでもさわりともせず

ざわりともせず

翅を摘まんで持ち上げてやるが

それでもばたりともせず

じたりともせず

まるで死後硬直の忘れ物

足の往来の起こらない

日の当たりの明るい縁石に

そっくり着地させてしまっても

とうとうトンボは動かない

四つの翅の一欠けも

一つの破れも見当たらず

淡い黄色の薄光線を

四つの翅で 余すことなく照らすだけ


その日真上に昇る日の頃に

熱いくらいに照る縁石に

トンボは一つも落ちてない

眩い黄色の熱光線を

縁石一つが 余すことなく照らすだけ

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