19/40
19
神保町はパラレルワールド
玉石混交のにおい立つ知の集合体
小一時間も散策すれば
自分の居所すら見失いかねない時間の結節点
茶ばんだ頁をめくり
古びたインクの気配と埃の混合物を鼻孔で摂取し
あちこち時代へ飛んで
見も知らぬ他人の頭の中へ分け入って
歩き疲れたならば路地裏に入り
ジャングルのごとき観葉植物繁る喫茶店で
ノスタルジイの結晶のようなクリームソーダを頼む
そうして元居た場所へ戻る頃には二・三歳ほど老けている
反対に若返っていることもある
どちらにしても行って戻ってみるまでわからない
神保町はパラレルワールド
行って戻れるパラレルワールド