17
セイタカく
てっぺんタカく
見られない
ふさかんむりの
セイタカく
黄色くアワダチ
一番上は
セイタカく
見られない
かすかなそよぎに
わずかのみ
揺れながら
てっぺんタカく
セイタカく
夜にのみ
寄りソウ
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
なーんもやる気がしないよ
と誰にでもなく口にしたら
そういうときは形から入るがいいよと言って
こちらに手を伸ばしたかと思うと
少し左寄りで分けて顎下まで伸びた私の前髪を
額の分け目から親指以外の四本指を櫛のように差し入れて
頭の上へ掻き上げた
それを両の手で束ねてくるくると二度ほどねじり
そのまま後頭部に向って倒して寝かせ
どこから出したのか白い髪留めのクリップで挟んで固定した
ぼけとしている間に露わになった額が気恥ずかしく
そんなんでやる気なんか出るかぼけ
と悪態をついた
悪態ついでに顔をあさってのほうに向けたが
そこそこの勢いで顔を振ってもあのさわさわと額にストレスする
前髪の触りがないのは明らかに過ぎるほどに快く
その快さを認めたとたん心に罪悪の感が灯り
謝りにしろ礼にしろ取り繕う何かしらを口にしなければと
背けた顔を元に戻すと
相手はさっさと机に向かい己が作業に没頭していた
こちらを気にする様子もない横顔は真っ直ぐ机上を向いて
目は忙しくちかちかと左右を動き
細やかに動く右手はペンを握って震えているようにも見える
ぼっと二呼吸ほどそれを眺めていると
何やらそれがどうも羨ましいように思えて
私は床にだらけた己が尻を持ち上げて
隣に据えられた自分の机の椅子へと運んだ
机上に目を落とすと真っ白な液晶が疲労して重たい目をいたぶった
つい気が折れそうになり顎をいいだけ引いて項垂れたがそれでも
頭上できっしり留められた前髪は額に降りてさわさわとストレスすることだけはしなかった