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呼応  作者: はじめ
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前触れもなく

長年置いていたアナログ時計の秒針が

さくさく時を刻む音が気になりだして

一度気になりだすと余計に音は大きく

何をするにも耳に響いてくるようで

とうとう時計の背を開いて

いつ交換したとも知れない電池を取り出した


前触れもなく

時計というものの動きを止めたので

時間はすっかり消えてしまって

今が何時であるのかわからない

今が何日であるのかも定かでない

わかるのは陽が暗くなれば一日が終わり

陽が明るくなればまた別の日が始まる

ということだけで

他には

木の葉が赤や黄に染まれば秋

底冷えして雪でも舞えば冬

日差しがぬるんで桜が咲けば春

じめじめとして雨が増えだしたら夏

ということくらいは知れる

驚くことに不便はない

陽が暗く雨風強く暑すぎて寒すぎる

それらの日にはじっとして過ぎるのを待ち

動くに快いときに動くだけで

日々は滞りなく進んでいく


ふと気づけば他の家にも

高層ビルにも町にも世界中のどこにも

時計というものが見られない

時間はすっかり消えてしまって

誰も今が何時であるのかわからない

誰も今が何日であるのかも定められない

驚くことに不便はない

陽が暗く雨風強く暑すぎて寒すぎる

それらの日にはじっとして過ぎるのを待ち

動くに快いときに動くだけで

世は滞りなく回っていく


時計というものが発明されて幾百年のち

人は時計というものが不要であるということを知った

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