表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
呼応  作者: はじめ
14/40

14

机に座りキーボードをかたかたやっている最中

ふと考え事などしてやや右に目をやると

ちょうど焦点の合う位置にそれはある

壁に据えてある棚の棚と壁との接点に

先から設けられた蜘蛛の巣は

拳を握ったよりも狭小の

三点固定のたわみ造りで

胡麻粒よりも小さな若蜘蛛がちまちまと住んでいる


机に座りキーボードをかたかたやっている最中

ふと考え事などして久方ぶりに右に目をやると

巣は埃を被ってたわみが深く

かかる虫の姿もない

糸を指先でつついと触れてみても

家主が顔を出す気配はない

棚板にはあわれ家主の糧となった羽虫の

芥子粒よりも小さな翅だけがぱらぱらと落ちている


空になった巣はいつまでも空のまま

再び主が住まうのを見た試しがない

主のない埃と糸の一緒くたになったものをちり紙で絡め取る

ところが取り去ってしまうと不思議なことに

数日のうちに新たな巣が設けられる

手洗い場の隅の巣も部屋角の天井の巣もそうであった

ピンと張った糸も瑞々しく新たな巣には新たな主が居る

元の主が戻ってきたか以前見なくなった別の主かと

つい知り合いを迎える気持ちになりはするが

この時には以前の主らの姿形をすっかり忘れているものだから

やむを得ず毎度新顔を迎える気持ちで眺めている

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ