2 『POW《パウ》-捕虜-』
人と話すのは、特に初対面の人との会話は苦手です
出来れば、人間関係にとらわれず生きていきたい
それが出来るのならば、世の中の見え方ももっとマシになるだろうに・・・
「ぷはぁー!美味いッ!キンキンに冷えたビールは、
身体に染みわたるなぁ」
………
「じゃ、ねーわ!」
(「シャッフル、そろそろ話せよ」)
(『あんまり良い飲みっぷりだったからつい見惚れて
しまっていた』)
(『では、まず、』)
シャッフルが話を始めようとした矢先だった。
「おい、兄ちゃん。ここいらじゃ見ない服着てんな。
どっかの貴族かなんかか?」
さっき店に入った時に、僕を睨みつけてきた強面の
男がそこに立っていた。
「いや、まぁ、観光客だ。気にしないでくれ」
僕は、人と関わるのは嫌いだ。
まして、酒を飲んでいる時なんかは、
特に1人にしてほしい。
「おいおい、連れねー兄ちゃんだな。
余所者にここいらの決まりを教えてやろうって
いう、俺の親切心を無視すんなよ」
強面の男は、僕の隣の椅子に腰かけ、肩を組んできた。
「いや、本当に良いんで。
そうゆうの止めてもらっていい?」
僕は、肩に置かれた手を振りほどき、そっぽを向いた。
「ちッ。余所者が調子くれやがって。おいッ!」
男の掛け声で、周りにいた強面の男たち数人が、
僕を囲んだ。
やばい。どんどん状況が悪化していく。
これも、社会不適合者の弊害か………。
(『タイミングが良いな。こいつら空気が読めるな』)
シャッフルの声が頭に響いた。
(『早速、レクチャーだ。実践なら話も早い』)
シャッフルが話終えると同時に、男どもが僕の腕を
掴んできた。
「おら、ちょっと表来い余所者の兄ちゃん」
僕は、腕を強く引っ張られ、無理矢理椅子から
立たされた。
店の裏路地に連れて行かれ、ようやく腕を
離された。
男達は、にやけながら僕の方を見て、
「兄ちゃんが大人しく俺達の話を聞いて、
それに従うなら文句はねぇ。すぐに、
店に戻って一杯おごってやってもかまわねぇ。
だが、反抗するなら話は別だ。どうする?」
面倒臭いことになったな………。
(「おいッ、シャッフル。どうすんだコレ?」)
(『ここのチョイスは、「反抗」一択だ』)
(「自慢じゃないが、僕は喧嘩なんかしたこと
ないから多分ボコボコにされるぞ」)
(『大丈夫だ。私を信じて勇敢に立ち向かうといい』)
はぁ………。
過去に来て早々、これかよ。だから、人と関わるのは、
嫌なんだ。
「断る!だいたい、初対面で名前も名乗らず、力任せ
に、外に連れ出し、強制的に話を聞かされたところ
で、それに従う道理なんて無い。そもそも僕は、
人間不信者なもんでな。悪いな」
(「骨は拾えよぉ」)
僕の返答を聞いた男達は、一斉に僕に襲い掛かってきた。
殴られるッ!
僕の人生で初めて、頬に他人の拳が触れた。
あ、あれ?
思ったほど痛くないな。
次は蹴りが飛んできた。太ももに伝わる衝撃と
疼痛………。
ん?
大したことないな。
(『君の近くに私の杖、このオープスがある限り、
君は常人の約5倍のステータスになる。あの程度
じゃ、痛みは感じないはずだ。触れられた程度
というのが関の山だ』)
オープス???
その場に、平然と立ち尽くす僕を見て、男達の顔色が
変わる。
そして懐から、何やら宝石のようなものを取り出した。
『リード!』
宝石を手に男達が、言葉を発すると、宝石が光り始めた。
次の瞬間、男達の手に武器が備わっていた。
(「シャッフル、あれはさすがにヤバいんじゃ?」)
(『問題無い。あの程度ならダメージにもならん』)
それでも、さすがに武器が出てきては、僕も身構えざる
を得ない。
双方身構える。
と、その時。
『都市内での不正なオープスの使用を確認しました。
直ちに、問題を解決、対象を捕縛します』
辺りにどこからか、声が木霊し、空間が赤く変色する。
まるで、パトカーのサイレン灯さながらの光に男達が
拘束された。
「お兄さーん!大丈夫だった!?」
酒場兼宿屋の女のコだ。
「ま、まぁなんとか」
「よかったぁ。急に『POWの空間拘束』が発現したから
ビックリしたよぉ」
「POWの空間拘束?」
「うん。都市内でオープスを不正使用すると、
プリズン・オブ・ワーカーへ飛ばされて拘束されるの。
そのシステムのことをPOWっていうんだよ。
その名通り、『捕虜』にされるの」
不正使用か………。
僕のは、それに該当しなかったのか?
それに捕虜って、国にか?
まぁ、ともあれ、これで難は去った。
「酒場だから、あーゆうガラの悪い連中もたまに
いるの。迷惑かけちゃってごめんね。さ、戻り
ましょ。お詫びにサービスしてあげる」
サービス?
酒場に戻ると、テーブルの上に大量の料理が
用意されていた。
ですよねー。
世の中そんなに甘くないよねー。
「迷惑を掛けたお礼。料金はいらないからね」
そうゆうと、女のコはエールを僕に差し出した。
「宿泊の手続きは、食事が終わったら、カウンター
に来てくれればできるからね。じゃ、今度こそ
ごゆっくりー」
やっと落ち着いたな。
(「シャッフル。そろそろ話してくれ。例の
オープスのことも含めてな」)
(『うむ。では』)
引き続き、投稿していきます