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プラス0  作者: 生丸八光
1/5

一話なっ!何なん?

「激熱!」


 パチンコ台から聞こえた声に、気合いを入れて液晶画面を見つめる男・・


「おりゃあーっ!」


 飛び出したボタンを叩き付けると、肩を落として立ち上がり、出口に向かって歩き出す・・


 どうやら、ハズれたようだ・・


 真夏の日差しと地面からの照り返し、()せ返る様な暑さに溜め息を付き


「あちぃ~」

サングラスをかけた・・


 目の前をアイスクリームを手にした高校生のカップルが通り過ぎ、240円の看板にポケットの小銭を(つか)み出すと87円・・


「チェッ!学生より、金無しかよ・・」



 男は、公園の水飲み場に並んでいた・・


 幼稚園児に混ざって並ぶ男の名は、高杉健三35歳。無職で独身・・全財産87円・・園児の冷たい視線が突き刺さって来る・・


 体中から湧き出る汗、周りの視線を気にせず水をガブガブ飲みまくるって、『チャプ・チャプ』音がするのを感じながら満足そうにベンチにふんぞり返ると、脇のごみ箱から新聞を引っ張り読み出した、その時!


「きゃぁーっ!たすけてー!」


正面から聞こえる(かん)高い声!


新聞をずらして覗き込むと、五歳くらいの子供が追いかけっこをしている・・


『はぁ・・ガキは気楽でいいよなぁ・・』

と思ったのも束の間、女の子は必死な形相でこっちに向かって来る・・


 その後ろを追いかける子供の手には包丁!


「なっ!・・何なん?」


「おじさん!助けて!」


 女の子はベンチを回り込み、高杉の後ろにしがみ付く!


「おっさん!そこをどきな!」


 追いかけて来た子供に包丁を突き付けられる高杉・・


「どっどうした・・包丁なんて物騒な・・とりあえず一旦落ち着こ・・なっ!」


落ち着かせようと両手を上げるが


「いいから、そこをどきなって!その女をブッ殺すんだから!どかねぇと、おっさんも一緒に()っちまうぞ!」


「なっ何だと!このくそガ・・ってのは冗談で、理由(わけ)を聞かせてくれよ!なっ!いいだろう・・」


「チエッ!めんどくせぇなぁ・・」


 面倒臭そうに頭を()き、女の子を指さすと


「そいつが泥で作った団子を食べろって言うから食ったんだよ!そしたら、ゲロマズで口の中はジャリジャリするし、頭に来たから殺すんだ!」


高杉はベンチからズリ落ちた・・


「い、いや・・それはだなぁ・・食べた振りをするんだ・・ままごとじゃねぇか・・本当に食べる奴はバカだぞ!」


とベンチに座り直し


「おまえが悪い!包丁なんかしまえ!刑務所に行きたくないだろう」


「へん!オレは、まだ五歳だから刑務所に入らなくていいし前科も付かない。だから殺してやるのさ!」


「・・ったく!最近のガキは賢いって言うか・・いいか、人を殺すってのは大変な事なんだ!そんな事したら、大人になった時に絶対後悔するから!」


 高杉は、そう言って立ち上がると威圧的に子供を見下ろす!


「後悔なんかしねぇ!オレは、大人になったら殺し屋になるんだからさっ!」


包丁を構え、高杉を睨み返す!


「はぁ・・ガキは、これだから・・いいか、殺し屋なんてドラマか映画の話で実際には居ないから!」


と言って、しゃがみ込むと


「医者か弁護士を目指すんだ!お金がいっぱい稼げていいぞぉー!」


と子供の頭を撫でたその時、高杉の脇腹に包丁が突き刺さった!


「ぐぁっ!何してんだぁ!」


「おっさんがうるさいからだよ!いま内臓を()き回してやるから、おっさん死んじゃうよ!」


「バ・・バカヤロー・・俺は、そんな簡単に・・死なない・・んだよ・・」


 子供の手を掴み、力づくで包丁を腹から抜くと


「世の中にはなぁ・・不死身の男ってモンがいるんだ!それが俺だ・・」


 子供から包丁を取り上げ


「見てみろ!お前が刺した所を・・ほら、もう治ってるだろう」


 包丁を刺した所が傷痕もなく綺麗に治っていた・・


「ひえっ!バ・バケモン・・」


「いいか!殺し屋になるなんて止めとけ!」


そう言って、目に涙を溜めジタバタしている子供の手を離してやると、一目散で逃げて行く・・


「医者か弁護士を目指すんだぞーっ!」


逃げて行く子供の背中に声を掛け、女の子に視線を向けると


「バケモノ!くたばれっ!」


と言って、逃げて行った・・


「けっ!助けてもらっといて、これだ・・」


 血の付いた包丁に目をやり、溜め息を付く高杉・・


「動くなっ!刃物をゆっくり地面に置け!」


聞こえた声に目を向けると、警察官が拳銃を構えていた・・


『なっ!何なん・・』


 高杉が、すぐに包丁を地面に置き、両手を上げると


「3時21分、銃刀法違反で現行犯逮捕!」


 警察官が手錠をかけ


「お前、刃物に血が付いてるぞ!誰か刺したのか?」


「えっ?刺してないですよ・・この血は、俺の血なんです・・」


「お前の血だと!・・フンッまぁいい・・署でたっぷり締め上げてもらえ!」


と言うと、無線を手にし


「通報のあった刃物男を確保しました!これから署に連行します。」


 高杉をパトカーに乗せ走り出した・・








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