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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

オトコトモダチ

作者: 黒野みゆう

初投稿です。

今年から大学で、本格的に作家を目指して勉強します。

勢いだけで書いたものなので、温かい目で見て頂けると嬉しいです!

「珍しいな、こんなところで会うなんて」

 夕暮れ時。偶然通りかかった公園で、ベンチに座り込んでいるあいつの姿を見つけた。

 僕が声を掛けると、落ちていた頭がゆっくりと上がる。

「あぁ」

 驚いたのか、ただの溜息か、同意の言葉なのかも分からない声が、彼の口から零れた。どうやら、かなり疲れているらしい。

 目が合い、胸が少し締め付けられる。

 こいつは、僕の好きな人。

でももちろん、その気持ちを伝えたことはない。周りから、そして彼自身から見ても、この関係はただの男友達だ。

「いったい、どうしたんだよ」

 隣に腰掛け、静かに彼の顔を覗き込む。こんな時でさえ、こいつの顔は他の誰よりも綺麗だった。

「んー、色々あって、疲れた……」

 顔を覆いながら、小さく呟く。こいつには似つかわしくない、随分とくたびれた声だ。それに弱音を吐くなんて、よっぽどのことがあったのだろう。

「そっか」

 でも具体的なことを言わないってことは、きっと話したくないのだ。僕は、なんでもないようなふりをして返した。

 ――もし、僕が恋人だったら……もう少しは、甘えてくれるのだろうか。

 そんな考えが頭を過る。自分の気持ちを伝えたこともないくせに。それでも、やはりどうしても考えてしまうのだ。

 こいつには、笑っていてほしい。そして願うなら、僕の隣で。

「よし、今からメシ食いに行くか」

 なるべく明るく、僕はそう言った。隣の彼が勢いよくこちらを向く。今日初めて見た、こいつの嬉しそうな顔だった。

 きっと、誰でも良いから相手になってくれる奴が欲しかったんだろう。そこに偶然、友達の僕が通りかかった。僕にとっては特別でも、こいつにとっては、話しやすい相手でラッキーくらいの認識でしかない。

 二人で同時に立ち上がる。

「楽しみだな、お前とのメシ」

 彼はそう言った。

 弱っているところに付けこむなんて、僕も悪い男だな。

 ふぅ、と溜息を吐くと、彼がこちらを向いたから、なんでもないと首を振った。

 男友達。この関係は、近いように見えて、僕が望むものとは最も遠い位置にある。

「じゃあ、行こうか」

 僕が歩き出すと、同じ速さで彼も続いた。

 友達という言葉がこれほど苦しいなんて、いったい誰が分かっただろうか。

 夕日が、二つの長い影をつくる。


 ――この関係が、早く終わってしまえば良いのに。




 ***



「珍しいな、こんなところで会うなんて」

 夕暮れ時。俺が公園のベンチに座り込んでいると、頭の上から聞き慣れた声が落ちてきた。

「あぁ」

 顔を上げると、目の前にいたのはやっぱりあいつ。気が抜けたのかな。なんだか変な声が出てしまった。

 目が合い、少し胸が苦しくなる。

 こいつは、俺の好きな人。

 もちろん、直接伝えたことなんてない。そんなことしたら、嫌われるに決まっている。俺にとっては好きな奴でも、こいつから見た俺は、ただの男友達なんだから。

「いったい、どうしたんだよ」

 俺の隣に腰掛けながら、あいつが覗き込んでくる。相も変わらず、よく整った顔だ。

「んー、色々あって、疲れた……」

 ほぼ無意識に、口から弱音が零れていた。あれ、俺、ホントに疲れてたんだ。自分で自分に驚く。まぁ、なんとか顔は手で隠すことができたけど。こいつに、今の俺の笑えない顔は見てほしくない。

「そっか」

 軽い口調で、あいつが返事をする。きっと分かってくれているんだ、俺が話したくないってこと。こいつの前では、俺はいつだって明るくありたい。でも、

 ――もし、俺が恋人だったら……もう少し甘えさせてくれるのだろうか。

 思わず、そんなことを考えてしまった。そんなことありえないって、分かっているはずなのに。こいつが優しいのは誰にでもで、決して俺にだけじゃない。しかも男同士だ。こいつの頭には、俺は恋愛対象のれの字もないんだろう。

「よし、今からメシ食いに行くか」

 なのに。その言葉に、一瞬で反応してしまった。好きな奴に誘われて、嬉しくならないわけがないんだ。

 きっとこいつが俺に気を遣ってくれているのは、そういう性格だってことと、あと、俺が友達だから。この関係が崩れたら、俺はもうきっと、二度とこいつと関わることができない。

 二人で同時に立ち上がる。

「楽しみだな、お前とのメシ」

 だから俺は、精一杯、友達を演じるしかないんだ。

 でも、こいつの優しさに付けこんでまで一緒にいたいなんて、俺も堕ちたもんだよな。

 隣で溜息が聞こえた気がして見てみたけど、あいつは、なんでもないと首を振った。

 男友達。これは、俺にとっての、こいつと繋がる最後の砦。

「じゃあ、行こうか」

 そう言ってあいつが歩き出したから、俺も同じ速度でそれに続いた。

 俺の勝手な気持ちを伝えて、友達を終わりにしたくない。

 夕日が、二つの長い影をつくる。


 ――この関係が、このまま永遠に続けば良いのに。


お読み頂き、ありがとうございました!

良ければ、感想や評価など頂けると幸いですm(_ _)m

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