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第93話・初対面で見下すということの意味を、ぜひ勉強していただこう

 

「みなさんお待たせしました! これより優勝を賭けたバトルロワイヤル本戦を開始します!!」


 ファンタジア・コロシアム本戦会場。

 湧き上がる熱気の中央で、俺を含む総勢100人の選手が会場専用転移魔法で現れた。


 夏の陽光が、白くまぶしく照らし出した。


「すごい盛り上がりだな……、選手も選手で買い物9割引券でこうも大勢参加するものなのか?」


 俺の問いに、アリサが腕を伸ばしつつ答える。


「大会はファンタジアの公式チャンネルがライブ配信してるから、みんな活躍するところを大衆に見せたいんじゃないかな?」


「あぁ……そういうことか。同接数が400万人だっけ? 確かにここで活躍できれば当面仕事には困らなそうだ」


 元冒険者としての率直な感想。

 あの稼業は知名度が大変影響するので、こうした機会に名を広めようとみんな企むわけか。


「ノコノコ現れてずいぶん余裕ねっ、竜王級。どうせ範囲攻撃で雑にやるつもりでしょ?♪」


 こいつ含めて。

 クスクスと笑うレナが、大弓を持ちながらまたも煽ってきた。

 めっちゃ絡んでくるじゃん。


「別に余裕じゃないさ、そっちこそずいぶん自信があるんだな。怖いくらいだよ」


「あっれれ〜? ビビっちゃったぁ? なんなら今から速攻場外行ってもらっていいけどぉ〜?」


 んなわけない。

 やはり、遠近戦闘で妙な自信があるから必死に範囲攻撃を牽制している様子。


 ……俺が大規模魔法しかできないとでも?


「アルスくんの前にさ、わたしとやろうよレナさん。弓使い最強のあなたなら楽勝でしょ?」


「なにアンタ、誰よ?」


「アリサって呼んで、わたし王立魔法学園の生徒会会計なんだ」


 ニッコリと可愛らしく振る舞う彼女は、その実怒りでたぶん燃え上がっている。

 俺やユリアを小馬鹿にした眼前の女を、許すまじと言わん表情だ。


「いいわよいいわよ〜、なんなら真っ先にアンタから片付けてあげる♪。ボッコボコにして、無様に地面に這いつくばる姿を世界配信してあげる」


「フーン……、じゃあ決まりだね」


 試合開始のカウントが始まる。

 ––––3、2……1。


「バトルロワイヤル本戦––––始めぇッ!!!」


 試合開始と同時に、俺は相棒へ向かい突っ込んだ。


「アリサ!!!」


「了解っ!!」


 手を互いに繋ぎ、勢いそのままにアリサが俺を直上へぶん投げる。

 コロシアム上空で『魔法能力強化(ペルセウス)』を発動。


 膨大な紅色のオーラと衝撃波が、街を地震のように大きく揺らした。


「『飛翔魔法(メテオール)』!!」


 対ユリア戦で活躍した魔法で、俺は地上の武舞台目掛けて急降下した。


「まずは––––50人っ」


 超高速の低空機動で、俺は10秒掛からず他の参加者たちおよそ半数を叩き落とした。

 身体能力は上げていないので、痛いくらいで済むはずだ。


 既に余裕の表情が崩れているレナへ、アリサが肉薄する。


「えっ––––」


 ––––ズンッ––––!!


 鈍い音が響く。

 アリサの拳が、レナの腹部へ手首深くまでめり込んだのだ。


「カハッ……!?」


 強烈なパンチに、口端から唾液を垂らしながらレナは膝をつく。

 何が起きたかわからない、意識の外側から攻撃を打ち込まれた彼女はそんな顔をしていた。


「レナさんってさ……、自称弓ガチ勢なんだよね?」


「あぎゅっ……!?


 桃色の髪をガッと掴んだアリサは、彼女を無理矢理立たせ、正面に持って来させた。

 既に先ほどまでの嘲笑気味な顔が消え失せているレナへ、笑顔で語りかける。


「わたしを無様に地面へ這いつくばらせるんでしょ? やってみてよ」


「グッ……ぁ! こっのぉおおおッ!!」


 手を振り解き、レナは落としていた大弓を掴んで距離を取った。

 ちなみに彼女のバディはたった今俺が突き落としたので、もう味方はいない。


 だが怒りに燃える彼女は、パートナーなど眼中にないようだ。


「わたしを殴ったこと、人生全部で後悔させてやるっ!! ––––『炎属性エンチャント』!『全遠距離攻撃強化』!!」


 魔法で能力を底上げしてから、レナは渾身の矢を放った。


「貫けぇッ!!!」


 全力の一撃。

 しかしその瞬間、アリサの髪と瞳が淡い紫色へ一瞬で変わった。


「ほい」


 彼女に近づいた矢から、纏っていた魔法の一切が消滅した。

 全ての魔法を無効化してしまうユニークスキル、『マジックブレイカー』だ。


 勢いを失った攻撃はアッサリかわされ、別の参加者へ背中から当たって場外に落とす。


「ぇ……、へっ?」


「もしかしてさ、今のが本気? こんなんでアルスくんの範囲攻撃さえなければマジで勝てると思ってたんだ」


 アリサの言葉と同じくして、俺は97人目を場外へ落とした。


「凄まじい展開です!! これで残ったのはアルス・イージスフォードのコンビと、冒険者レナのみ!!」


 ガラガラになった舞台中央で、俺は恐怖に引き攣るレナに振り返る。


「ご要望通り、範囲攻撃は縛った……これで良いだろう? シチュエーションも仕上がったし、君の本気とやらを見せてもらって良いかな?」


 人を見下し初対面で失礼を働く行為が、何を意味するのか是非勉強していただこう。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アリサの言葉と同じくして、俺は96人目を場外へ落とした。 100人戦でアルス達+イキり少女の3人残りだけなら97人脱落じゃない? [一言] やっぱり魔法無効ってチートだなw まぁアルス…
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