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第90話・イベントだらけの豊水祭

 

 豪奢な駅を出てすぐに、俺たちは声を出した。

 大通りに隣接する建物はどれもが巨大で、首を上へ上げなければ屋根が見えないほどのサイズ。


 いやなんだこれ……初めて来たが王都と比べてもスケールが違う、高層だし白色基調でめっちゃ綺麗。

 おまけにそこかしこから水が溢れ、川や空中で水路を形成している。


「うっひゃー、なんかお金の掛かり方が違う感じだね。王都よりデカいんじゃないの?」


 大通りを歩きながら、アリサも感嘆している。

 そして今の言葉はあながち間違いじゃない、


「ミリシア王国は首都機能と経済拠点を分けてるからな、大陸経済の交流地でさらに巨大観光地……そりゃデカくもなる」


「なるほど〜……。じゃあ政治の【王都】、経済の【ファンタジア】なんだ。母国の教科書には載ってなかったな〜」


 外国っ子らしいことを言いつつ、周囲を楽しげに見渡すアリサ。


「ところでアルス、『豊水祭』ってなに?」


 駅のパンフレットを取ったらしいミライが、何故か俺へ聞いてくる。

 そういえばなんだったっけな……、イベントをやるらしいとは聞きつつもリサーチをすっかり怠っていた。


 イマイチ回答に困っていた俺へ、ユリアが助け舟を出してくれる。


「『豊水祭』とは、水を司る蒼天使へ文字通り豊水を願う行事だそうです。水で栄えたこの街らしいお祭りですよね」


「水ってのも妙な話ね、雨乞いでもするわけ?」


「えぇ、雨の恵みと街の繁栄、温泉の活気を願って空へ祈りを––––ほら、ちょうどあそこにあるのがお祭りの中心地です」


 ユリアが指差したのは、建物群の間から見える物体––––街の中心部から天を穿つように造られた超巨大タワーだった。


「デカいな……、かなり大きいって言われる王城より凄いぞ」


「観光パンフには『ファンタジア・ツリー』って書いてる、高さは……てっぺんで608メートルだって。どんな建築してんのよ……」


 ここファンタジアは、世界でも珍しく火山性じゃないのに温泉が湧き出ている。

 活火山が近くにないので、災害も少ない。


 それでも、多少の地震くらいはあることを考えると––––


「ファンタジア・ツリーを含めたこの辺の高層建築群……、全部耐震仕様ってことか」


「パンフの歴史解説だと、ん〜……日本人が中心に都市計画から建築まで進めたみたい」


「また流浪の日本人か。コミフェスといいファンタジアといい、昔からミリシアに影響与えまくってるな」


 そういえばミライの母親も日本人。

 幼馴染とはいえ、まだ会ったことなかったな……。


「ん〜つまり、天に近い場所でお祈りすればもっとお空に届くと昔の人は考えたんだね」


 アリサの問いに、ユリアは塔のてっぺんを見ながら返す。


「いわゆる自然崇拝に近いかもですね、アニミズムを始めこの世のあらゆるものには神や霊が宿っているという考え––––わたしは結構好きです」


「まぁ……この場合、信仰対象は天使だけどな」


 そんな雑談をしながら歩いているが、目的地はちゃんと決まっている。

 目指すは街の外れにある大賢者フォルティシア邸、バスを使うのも良いが今回は観光しながら向かう。


 のんびりした道中になりそうだ……、なーんて油断したその時だった。


「あっ、見てよこれ!」


 テンションの高いミライが、パンフレットの最後のページを俺へ向けてくる。


「なんだ? ……大規模開催イベント、『豊水祭ではっちゃけろ、水滴弾けるファンタジア・大乱闘』?」


 なんつーふざけた名前だ、主催者の顔が見てみたい。


「なんかタッグで出れる本戦100人のチームバトルロワイヤルだって! 街の冒険者ギルドも総出みたい! まさにお祭りよね!」


 それは凄い、時間的にも距離的にも見に行けるな。

 予定を整理しようとメモを出した瞬間だった。


「でっ! でっ! 優勝賞品は、市内全域で使える90%オフ買い物券(期限内無制限)が貰えるんだって!」


 っ––––嫌な予感……。

 遠ざかろうとした俺の腕を、ミライはがっしり掴んできた。


「ちょっと参加してみよーよっ! 飛び込みオーケー、参加費はわたしが先行投資で出したげるから!」


 100人バトルロワイヤル。

 はっちゃけろ、ファンタジア・大乱闘––––出場決定。


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