【追放者サイド】第8話・ランキングが……、ランキングがドンドン落ちていく!
「クソっ……! なんでだ、なんで俺たちがあんなオーガ・ロードごときにッ!」
ギルド内の椅子を思いきり蹴り倒したグリードは、荒々しく息を吐きながら叫ぶ。
周囲の構成員たちも含めて、完全に行き詰まったような表情だ。
「おいミリア! 魔導士ならなんかわかんねぇのか!!」
乱暴な口調に、ミリアは売り言葉に買い言葉で返す。
「私の専門は攻撃魔法なのよ!? わかるわけないじゃない、詠唱にあそこまで時間が掛かったのも、なんであんなちっぽけな威力だったのかも意味不明に決まってるでしょ!?」
机に置いた魔導タブレットには、『神の矛』公式チャンネルが映っている。
1日経ってから現在の登録者数は、98万人にまで減っていた。
「すぐにでも200万人を超える勢いだったのが、今や100万を切っている……」
ラントの消沈した声が、静かにこだます。
あの後急いで言い訳まがいの声明も出したのだが、カメラに映っていたのはあまりに無様な姿だったため、火に油を注ぐ結果となった。
コメント欄は大炎上、該当の動画には過去最高の低評価数がついている。
さらに––––
「グリードさん、ギルド庁から連絡です」
公式メッセージ箱担当の構成員が、グリードに駆け寄る。
渡された紙のメッセージを見た剣聖の額に、大粒の汗が流れ落ちた。
「どうしたのグリード?」
ミリアの問いに、彼は紙をグシャリと握りつぶしながら声を絞り出す。
「あの動画を見られてた……! さっき会議で俺たち『神の矛』のランキング降格が決まったらしい」
「そんな! なっ、何位にまで落ちたの......?」
「14位だ……ッ!! クソが!!!!」
なぜだ、これまであんなに順調だったのにどこで歯車が狂った!
俺たち全員が、呪術教団の恨みでも買ってデバフを掛けられまくってるのかもしれない。
グリードは、脳内で必死にサーチするが気づかない。
むしろ、余計に挽回せねばという焦燥感が彼を飲み込んでいった。
「とっておいた大型企画の準備をしろっ!! ここで一気に巻き返してやるぞッ!!」
「大型企画?」
「王国三大闇ギルドの一角、『ルールブレイカー』の構成員をボコってカメラで晒しあげるんだ! ここでバズればすぐにでも調子を取り戻せる……!」
それまで黙っていた唯一の高レベル冒険者、大弓使いの新人ペインが思わず立ち上がった。
「グリード! 悪いことは言わねえからやめろっ!! あそこに手を出したらギルド同士の戦争になるぞ!」
「わかってねぇなペインっ! だからこそ名声を取り戻せる、うざったい闇ギルドを俺たちがぶっ潰せば、もしかしたらランキング3位とかも夢じゃないんだぜ?」
「わかってないのはお前だ! あそこの構成員は『魔人級・魔導士』が10人、『エルフ王級・魔導士』が30人もいる! ランキング上位ギルドで連合を組まなきゃ返り討ちだぞ!」
「魔人級ならウチのミリアがいる、それに俺は100年に一度の剣聖と言われてるんだ。近接戦に持ち込めば俺の圧勝だろうな」
「付き合いきれんッ!!」
ペインは荷物をまとめると、そのまま席を離れた。
「俺は命が惜しいんでな、ここから先はお前らだけでやってくれ。––––悪いが古巣に帰らせてもらう」
「チッ、お前もあの無能エンチャンターと一緒だったか。好きにしろ、臆病者は『神の矛』に必要ない」
扉を開ける間際、ペインは僅かに振り返った。
「もしかしたらそのエンチャンター、見えづらいだけの巨大な柱だったのかもな」
「は? 今なんか言ったか?」
「ユグドラシルのチャンネル登録はしといてやるって言ったんだよ、お前らの企画を喫茶店でのんびり見させてもらう」
バタンっと、ペインはギルドの大扉を閉めた。
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