第7話・俺氏、エリート学園への入学を決める
「あらら……、配信止まっちゃった」
ミライが呟く。
喫茶店ナイトテーブルで、俺たちは『神の矛』公式チャンネルを見ていたのだが。
「見事すぎる敗走だな……」
「これ生きてんのかな?」
「たぶん……大丈夫だと思う、弓使いの人は普通に高レベルそうだったから、きっと出口までエスコートしてるだろ」
配信画面は暗転し、今もチャット欄だけが爆速で更新され続けている。
『神の矛がモンスター1体に完敗したってマジ?』
『調子悪かったとか? それか何かの演出じゃね? いくらなんでも無様すぎる』
『さすがに登録切るわ、グリード雑魚すぎ』
『お前ら失望すんなww、チャンネル登録者すげえ勢いで減ってるぞ』
見れば、120万人いた登録者が117万人まで減っている。
この数分間で、一気に3万人ものリスナーが切ったということだ。
ミライがタブレットの電源を落とす。
「ねぇ、あれってやっぱアルスがエンチャント全部解除しちゃったから?
「だろうな、ミリアには面接で見せた『魔法能力強化』、グリードとラントには『身体能力強化』っていうエンチャントを掛けてた」
どちらも俺が3年磨き上げたものだ。
おそらくあの配信における姿こそ、あいつら本来の姿なのだろう。
図らずも、俺は連中をずいぶんと甘やかしていたようだ。
「アルスくんのエンチャントは、昨日見た通り凄まじいものだということが証明されたようだね」
カウンターでカップを拭いていたマスターが、どこか満足気にしている。
「ひょっとしたら、君の能力の恩恵に気づいていまさら泣きついてくるかもな」
「もうあいつらには俺へ求人するなと言ってるんで、土下座されても戻りませんよ。それより––––」
俺は席を立ち、カウンターまで近づく。
「昨日のあれ、なんですか編入って……。俺仕事の面接に来たんですけど」
「あぁ、そういえばよく説明してなかったね。実は学園に勤務する馴染みの顧問から、有望株をヘッドハントなり何なりで持ってこいってせっつかれてるんだよ」
「はぁ……」
「それで、ミライちゃんからそれっぽい人がいると言われてね、テストしてみたらまさかの竜王級だったというわけだ」
マスターは汗をかきながら説明する。
あれだ、この人頼み事を断れないタイプの人だ。
「いやまぁ、編入できるならしたいです。ただその場合どうなるのかなと」
「ホントかい!? だったらミライちゃんと同じ学年に編入されるんじゃないかな? 君たち同い年でしょ」
俺は全力でミライへ振り返った。
「えっ? お前あそこの学生だったの……?」
「そうよ、言ってなかったっけ?」
「聞いてねーよ初耳だわ! あそこって倍率クソ高いだろ、さては裏口入学したな?」
「しっつれいな!! ちゃんと勉強&実技で合格したわよ! 学内順位だってけっこう上位だし」
知らなかった。
接客スマイルだけが取り柄の腐女子だと思ってたのに。
「おいこら、絶対失礼なこと考えてんだろアルス」
ミライにゲシゲシ足を蹴られていると、マスターが洗い物を終えてこちらへ来る。
「まぁあえてメリットを挙げるとするなら、学園を出れば将来の夢は大きく広がるだろうな。それに国防省が運営に噛んでるし、何より––––『生徒会』の権限が凄まじい」
「生徒会ですか?」
「あぁ、学園、国防軍OBの後ろ盾もあるせいかやたらと権力が強い。強権政治みたいなことは無論ないが、結構好きにできるみたいだよ」
マスターは俺を見ながら続けた。
「そこの生徒会長にまでなれば、将来へのプレミアチケットと強大な生徒会権力が手に入る。たぶん学園内でライフルだって所持できるだろう、試してみる価値はあると思うよ」
俺の中で何かが揺れ動く。
「なります、生徒会長」
割とアッサリ、俺は王立魔法学園への編入を決めていた。
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