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第54話・王立魔法学園生徒会VSドラゴニア

 

 王立魔法学園生徒会VS冒険者ギルド『ドラゴニア』。


 突然始まった前代未聞の決闘は、ユグドラシルを通じて王国中のタブレットへ情報として叩きつけた。

 誰が報道機関へ知らせたか、ラジオや飛行船のモニターにまで速報が走る。


「結構軽く受けちまったけど、なんかすげぇやっちまった感あるな……」


 手近にあったスコップを持ち、一言。


 まさかここまで大事になるとは……。

 大通りへ出た俺たちを、駆けつけた大量の王都民が防御魔法越しに遠巻きで囲んでいた。


 上空には飛行船が旋回しており、地上のカメラを大型モニターに映す。


「で、なーにシレッと参戦してんだよカレン」


 俺とペインの決闘のはずが、いつの間にやらこいつもやる気満々で剣を持っていた。


「リーダーのわたしが出ないで、誰がこのビッグイベントを盛り上げるのよ。トップランカーとしてエンターテイメントを意識しただけ」


「そう言って、ホントは俺へ日頃の鬱憤を晴らしたいだけだろ」


「フン、当たり前でしょ。アルス兄をぶん殴れる絶好のチャンス––––見逃さないでか」


 荒い鼻息で、カレンは大弓を構えたペインの横へ立つ。

 ってことは2対1か……、別にいいがどう立ち回ろうか。

 そう思考していた時だった。


「じゃあこちらも2人チームですね」


 俺の横へ、人混みを飛び越えてユリアが着地した。


「会長を2対1にはさせません、カレンさんが入るというならわたしも参加します」


 宝具『インフィニティー・オーダー』が具現化される。

 魔法杖モードで、カレン&ペインのコンビへ向けられた。


「––––サンキューなユリア、助かるよ」


「まぁ……副会長として当然です。それにわたしは……まだ誰も到達したことがない究極の領域へ、魔導士として辿り着きたい」


「なーる、自分を高めるにちょうど良いってわけね」


 遠方の塔から、カメラの反射光がいくつも見える。

 カレンいわく、この戦闘はライブ配信されるとのことだ。


 当然か……学園ランキング1位&2位対、ギルド内No.1、および2という凄まじいカード。


 おまけに『ドラゴニア』の公式チャンネル登録者数は、圧巻の3000万人。

 さっきタブレットで確認してみたら、その時点で同時視聴者数は2500万人を超えていた。


「準備はいい? 生徒会ツートップさん。やるからにはこっちも––––俄然、断固本気でやらせてもらう」


 笑みを浮かべ、グルリと回転したカレンを中心に蒼い焔が吹き荒れた。

 火災旋風のように渦巻き、真夏日だった王都中の気温をさらに底上げする。


 やがて爆炎が晴れ、姿を現す。


「血界魔装––––『蒼焔竜の衣』!!」


 抜かれた剣や、髪にまで蒼焔がほとばしっていた。

 強い……、さすがに大英雄の妹というだけはある。

 ワクワクしてきた。


「竜王級も生徒会も、絶対王者であるわたしたちには勝てない! それを教えてあげるっ!」


 カレンが変身して、34度だった飛行船モニターの温度表示が40度を一気に超える。


「行くぞッ! 魔法学園生徒会ッ!!!」


 ペインが魔力を放出し、弓を引き絞った。

 俺はスコップを、ユリアは宝具を構える。


「肩を並べて戦える日がくるとは、正直思わなかったよユリア」


「わたしもです、この決闘––––絶対に勝ちましょう」


「あぁ! 頼んだぜ、副会長ッ!」


 ペインの矢が石畳をえぐりながら放たれる。

 俺たちは同時に地を蹴り、左右に跳ぶことでそれを回避した。


「『身体能力強化(ネフィリム)』!!」


「『飛翔魔法(メテオール)』!!」


 俺とユリアは、それぞれ魔法を発動。

 前衛と後衛に分かれた。


 超高速で肉薄して、ペインへ武器代わりのスコップを叩きつける。


 ––––ガギィンッ––––!!!


 すぐさま繰り出してきたナイフで、彼はこっちの一撃をギリギリ受け止めた。


「俺の抜けた後だっけか……! あんたにゃ苦労掛けたなペインさん……!!」


「はっ! 全くだよ……!! こんな化け物に依存してたらあの実力も納得だ、なんて力してやがるてめぇッ……!!」


 無理矢理ペインを吹っ飛ばし、追撃しようとしたとき––––


「会長っ!!」


 眼前の石畳が溶断された。

 あっぶね、剣を振り下ろしたカレンが俺の前へ立ちはだかったのだ。


「通すわけないじゃんアルス兄、ついでに宣言したげる––––あんたら生徒会は、わたしたちに一撃も与えられない」


「そいつぁ結構だ、腹パンされても文句言うなよ?」


「むしろわたしがしてあげる、息も絶え絶えに苦しむアルス兄を拝んであげるから––––さっ!!」


 地面がマグマのように溶ける。

 振られた剣撃をかわし、俺はユリアへ合図を送った。


「今だっ!」


 上空で魔力を溜めていた彼女が、『インフィニティー・オーダー』を地上へ向ける。


「星凱亜––––『火星獣砲』!!!」


 演習都市を薙ぎ払ったあの攻撃魔法が、カレンとペインへ突っ込んでいく。

 だが、2人は避ける素振りすら見せない。


「副会長の名は伊達じゃない……か、さすがユリア姉さん」


 カレンが腕を振ると、焔が何重もの六角形を重ね合う。

 あれは……防御魔法か?


「『イグニール・ヘックスグリッド』!!!」


 ユリアの『火星獣砲』を正面から受け止めたそれは、なんとほぼ無傷で攻撃を耐えてしまった。

 四散した衝撃波が、窓ガラスを砕く。


「チッ……!」


 ノーダメージはさすがに予想外だったらしい。

 珍しく舌打ちしたユリアへ、勝ち誇ったようにカレンが焔を纏いながら告げる。


「言ったでしょう––––王立魔法学園生徒会、わたしたちは真のトップランカー……。相手が誰であろうと一撃も貰うことは許されない」


 盛り上がってきた。

 無理ゲー要素つくと燃えるんだよな……、俺。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エンピだぁぁぁぁ! [一言] 前作から読ませていただいてます
[一言] 何故スコップww アルス以外は全員本気装備なのにw 手元になかったんだろうけどアルスにも本来の武器の銃使わせてあげなよww
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