第46話・第77期生徒会
「おぉ……これが生徒会長の椅子か、なんか座り心地がすごいボワッとしてる」
––––王立魔法学園 生徒会室。
体育館の片付けが終わった俺は、さっそくここの鍵を貰って来てみた。
「狭い部屋に椅子とテーブルを詰めたみたいなやつを想像してたけど、どっちかっつーと前にラインメタル大佐と会った大使館の執務室に近いな」
応接用のソファーがあり、多目的テーブルと椅子、そして部屋の奥に生徒会長専用の椅子がある。
ガラスから陽光が入ってくるので、日当たりはバッチリ。
「せっかくだし、食器棚と人数分の食器も置いてみるか……。スペースなら部屋の隅を使えばいいし、仕事をするのに嗜好品は必須だからな」
ついになれた生徒会長という役職に、俺は上機嫌であれこれ考える。
「さて、あとはユリア副会長が誰を連れてくるかだが……」
この学園は生徒会長のみが選挙で選出され、当選した会長が副会長を誰にするか決める。
そして、新たに副会長となった者が最初に行う仕事こそ––––他の役員の任命だ。
今回ユリアに決めてほしいと頼んだのは、“書記”と“会計”。
とりあえず広報や会計監査、庶務などはまだいいだろう。
「なんにせよ、初見のヤツに対しての心構えくらいは––––」
俺が背筋を伸ばそうとしたとき、生徒会室の扉がバンっと勢いよく開かれた。
「うおおぉッ!?」
おもわず飛び上がりそうになった俺の耳へ、聞き覚えのある声が入ってくる。
「やっほー! アルスくん、学園ランキング1位&生徒会長当選おめでとーっ!!」
入ってきたのは、きらめくような銀髪をツーサイドアップにした快活、元気ハツラツといった言葉を具現化したような女の子。
整った小顔からニッと八重歯を覗かせ、ピョンピョンと俺の前までやってくる。
「もおぉお〜っ! ビックリさせんなよアリサ! 心臓に悪いわ!」
「えっへへ、めんごめんご。いやーここが生徒会室か〜……すっごいキレイじゃん」
彼女の名はアリサ・イリインスキー。
入学試験でバトった俺の友達だが、最近は選挙なりなんなりであまり会えていなかった。
ちなみにユリアと同じく外国人で、こちらは社会主義国家出身。
「なんだ? 当選の祝いにでも来てくれたのか?」
「それはもちろんだけど、新しい溜まり場がどんなところか早く見たくって」
ん? 溜まり場……?
どうにも話が噛み合ってない気がする、新たに質問しようとした時、アリサの後ろにあるドアからまたも人が飛び込んでくる。
「すみません会長! 職員室への書類提出で遅くなりました……!」
生徒会副会長のユリアだった。
汗だくなところを見るに、ここに来るまであちこち走ってきたようだ。
なんか学園1位の重圧がなくなった途端、少し弾けたような印象である。
「いや、特に急ぎの件はないし大丈夫だ……。それより役員の選出は決まったのか?」
「はぁっ……ふぅ。えぇ、問題ありません」
「そうか、それで誰に決めたんだ?」
「え? もう既に1人いるじゃないですか」
ユリアが手で差した先にいたのは、間に立つアリサだった。
「そうだった! 言うの忘れてたよ。わたし今日から生徒会“会計”になったんだ〜、よろしくねアルスくん」
「はっ? いやいやちょっと待て!」
俺はガタッと席を立つ。
「ユリアが……そう指名したのか?」
「うん、”ユリ“がどうしてもってお願いしてきたから断れなくって。まぁ元から生徒会に興味あったし」
ユリっ!? あだ名?!
「ごめん“アリサっち”、でも他に会計任せられる人いなかったから……」
「いいよいいよ! わたしこう見えて計算得意だし」
理解が追いつかない脳でなんとか整理する。
つまり……、こいつらあれか。
「君たち、仲良かったんだね……」
俺の言葉に、アリサはユリアをギュッとハグしながら答える。
「うん! 仲良いっていうかユリとはめっちゃ親友だよ。この学園に来て最初にできた友達だし、最初は冷たかったけど今じゃこの通り!」
「いやめっちゃ頬スリスリするじゃん……、え? ユリアまじでそうなの?」
「まぁ……はい、アリサっちはこう見えて入学時からの親友です。なんというかこの子危なっかしいから、わたしが見てないとすぐ事故りそうで」
それはわかる、しかしこいつらそういう関係だったとは……。
でもいるんだよなぁ、「わたしたちずっと一緒〜」みたいな女子。
たぶん彼女らがそんな感じだ。
両方とも外国人学生だから、国籍は違えどシンパシーを感じたのかも。
「オーケー……とりあえずアリサが会計なのはわかったが、書記は誰にしたんだ?」
「フフッ、そんなの1人しかいないじゃないですか」
「へっ?」
三度扉が開かれ、少女が入室してきた。
今回の選挙で最初から最後まで支えてくれた、大功労者にして……恩人。
茶髪を一括りのポニーテールにまとめた俺の親友––––
「や、やっほ〜……。生徒会室ってここで良かったっけ?」
「ミライ……っ!」
やっとハグから解放されたらしいユリアを見ると、腰に手を当てつつ俺へ向き直る。
「ブラッドフォードさんの能力は、今回の選挙で行った会長への援護射撃……特に応援演説を通してよく知れました。自信をもって任命できます」
俺の前へ歩み出たユリアの左右へ、気恥ずかしげにしたミライと、自信満々そうな顔のアリサが並んだ。
「会長、以上がわたしの選択した––––第77期生徒会役員の人選です。異論はあるでしょうか?」
差し出された紙は、役員決定に関する最終書類。
既に教師のサインがされており、残る欄は生徒会長である俺のみ……。
すぐに机からペンを出し、握り込んだ。
「異論なんてない、これからよろしく頼むぞ––––ブラッドフォード書記、エーベルハルト副会長、イリインスキー会計!」
ペンを走らせ、書類を完成させる。
––––第77期生徒会 始動。
生徒会役員リスト。
【生徒会長】
アルス・イージスフォード(学園ランキング1位)。
【副生徒会長】
ユリア・フォン・ブラウンシュヴァイク・エーベルハルト(学園ランキング2位)。
【生徒会書記】
ミライ・ブラッドフォード(学園ランキング8位)。
【生徒会会計】
アリサ・イリインスキー(学園ランキング7位)。




