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第403話・スイスラスト騎士

 

 俺の前まで歩いてきたスイスラスト騎士は、爽やかな笑みでこちらを見て言い放つ。


「これは失礼しましたね、君の防諜魔法は破れそうになかったので、不本意ながら広域ECMを使わせて貰った。誰と話していたかは知らないが……もうそれは使えないですよ」


 内に潜む凶悪さを丁寧語で隠しながら、じっくりと近づいてきた。

 こちらはベンチを背に、「はっ」と笑いながら返す。


「俺1人の通話を邪魔するのに、2〜3区画纏めて妨害を掛けるとは恐れ入る。出力からして最新型の装置だな?」


「えぇ、本来は戦争で正規軍を相手に使う物なんですが……君は竜王級でしょう? 準備はあるに越したことはない」


「戦争ねぇ。永世中立国が聞いて呆れるな、国是より宗教の方が大事か……感情で動く国家に先は無いぞ」


 俺の忠告が気に入らなかったのか、騎士の笑みが崩れる。


「神を信じない野蛮な人種らしい発想だ、天使に逆らう国家の方こそ未来などない。君には一度神書を読むことを薦めるよ」


「神書? あぁ……信仰を捧げぬ者はラグナロクで滅びるとかいう古代のエンタメ小説か。一部自然を神に擬人化する発想は好きだが、少々傲慢な内容だったな」


 神書など、この国ではいくらでも読める。

 信仰者を差別するつもりは無いが、俺はアレを真に受けて神を崇め、天使共に搾取されるつもりなど毛頭ない。


 俺の態度に、騎士は段々とイラついてきたようだった。


「神書を愚弄するか……野蛮人めっ、貴様のような人間が蔓延るから、あのような愚かしい選択をする国々が現れる」


「天界への宣戦布告か? 実害を伴う存在は排除するのがこの世の摂理だろ。それも––––相手が”宇宙人“なら尚更だ」


 鞘から剣が勢いよく抜かれる。

 銀色の刃が、俺へ向けられた。


「あくまで神を愚弄するか……! 神書に記された歴史こそ真実だ。天使は愚かな人間を助け、知恵を育んだ。宇宙人など存在しない」


「おっとこれは失礼、神書じゃ宇宙人の存在示唆はNGだったな。でも事実だ––––奴らは太陽系外からやって来た侵略者に他ならない」


 ファンタジアを襲った円盤は、地球に存在しない元素で構成されていたとアイリから聞いた。

 浮遊エンジンなどの機関や、まして陽電子ビームなど到底現代技術では再現できないシロモノ。


 素人の俺が見たって、どこか別の星の人類だと一瞬でわかる。

 奴らは、根本的な部分で俺たちと同じ種族––––人間だ。


「我らが主を侮辱するか……! 貴様は全世界25億のアルナ教信者を愚弄しているのだぞ!」


「25億の他人より、俺はお前の名前が知りたい。まさか名無しの騎士じゃないんだろ?」


 不快感を隠そうともしない騎士は、顔の前へ剣を置きながらゆっくりと構えた。


「私はスイスラスト共和国、星騎士アベルト。勇者支援の特命を受けてこの地を訪れた……当然貴様の暗殺も任務の内だ」


「そうか、アベルトだな……良い名前じゃないか」


「フンッ、名前は冥土の土産物に教えてやっただけだ。たった1人で無防備を晒していたこと……後悔するんだな」


 なるほど、アーシャさんのバックにはこいつがいたわけか。

 勇者支援を、スイスラストが本気で行っているのも理解できた。


「なぁアベルト」


「喋るな蛮族め、今に息の根を止める」


「いや、単純に疑問なんだけど––––」


 俺の全身を紅色のオーラが包む。

 指を鳴らした瞬間、巨大な王都が『魔法結界』に覆われた。


「なぜ安易に俺が”1人“だと信じ込んだ?」


「ッ!?」


 アベルトの直上から突っ込んで来たのは、茶髪をポニーテールに纏めた少女。

 手に持ったペン型魔法杖が振られ、攻撃を防いだ騎士を数メートル弾き飛ばす。


「刃まで向けてさ、ずいぶんと高尚な説教するじゃん。だからわたし……宗教って嫌いなのよね」


 俺の隣に立ったミライは、怒気を隠すことなく目の色を変えた。

 直後、天空から1本のイカヅチが降った。


 ミライへ直撃したそれは、高エネルギーを周囲へ撒き散らしながら四散する。

 光から現れたのは、1体のドラゴンだった。


「血界魔装––––『雷轟竜の鎧』ッ!!」


 茶髪をシャンパンゴールドに染め上げ、瞳は宝石のようなエメラルドグリーンへ。

 激しいスパークを纏ったミライは、真なる血界魔装へ変身した証拠。


 なぜ彼女が近くにいたのか理解できないといった顔の騎士へ、俺は告げてやる。


「残念だったなアベルト、俺の彼女はいつどこでだって彼氏をつけ狙ってる。隙を晒したどこかで––––俺を倒すためにな」


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