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第31話・事情聴取中、なぜか英雄に祭り上げられてるんですけど

 

「「「はぁ〜疲れたー……」」」


 警務隊本部の建物を出た俺とミライ、アリサはほぼ同時に、それこそ息ぴったりでハモった。


「事情聴取って長すぎだよぉ〜、怪我がある程度治ったとたんに毎日毎日、朝から晩まで聴取聴取聴取……!」


 学校のカバンを持ち直しながらぼやくアリサ。

 実際彼女の言う通りで、俺たちはここ1週間ずっと警務隊によって事情聴取を受けていた。


 っというかあんなのほぼ軟禁だ。


 一応今日から登校だが、ギリギリまでやっていたので警務隊本部からの登校になる。


「まぁ仕方ないだろ、あの魔導士モドキとかいう連中と戦ったのは俺たちだけだったんだから」


 あの時使った拳銃は、なんとか持ち主に返せた。

 上手く言い訳してほしいものである。


「でもぉっ! 学校を5日間も休むハメになるなんて聞いてないじゃん、わたしなんて敵のツルに腹パンされて悶絶しながら床に寝てただけだよ!?」


「その節はご愁傷様と言うしかないが、横にもっとダメージを受けてるヤツがいてだな……」


 顎で差した先には、呪詛のようによくわからない言語を延々とブツブツ唱え続けるミライの姿があった。


「シンカン……バラバラ、ナツコミ、チュウシ……、ワタシノスベテ……」


「み、ミライさん……」


 あまりに痛々しい姿、俺は顔を強張らせるアリサの肩へそっと手を置く。


「こいつは夏コミに全てを賭けていた、信念となけなしのバイト代を込めて描いた同人誌は1冊残らず粉砕。イベント自体も中止になった」


 優しく、努めて優しい目で俺はミライを見た。


「彼女はもう––––壊れてしまったんだ」


「ミライさん……!」


 そんなやり取りをしていると、俺たちの傍に1台の車がキッと止まった。

 窓が開けられる。


「みんな、聴取お疲れ様」


 和やかに運転席で微笑んだのは、大英雄グラン・ポーツマスさん。喫茶店『ナイトテーブル』のマスターだった。


「あっ、おはようございますマスター。昨日はありがとうございました」


 頭を下げた俺へ優しく頷いてくれる。

 ずっと聴取を受けてて帰れなかった俺たちへ、今日の荷物や着替え一式を届けてくれたのは何を隠そうマスターだ。


「礼には及ばないさ、事件に巻き込まれた部下のケアは上司の義務だからね」


「ねっ、ねぇアルスくん……この人大英雄だよね? なんで知り合いなの?」


 珍しく慄いた様子のアリサへ、振り向きながら答える。


「知り合いっていうか、バイトと住み込み先の上司」


「ウッソまじ!? やばい超本物じゃん……! こんなの興奮で永久凍土溶けるよ」


「いや溶けたらダメだろ」


 一連のツッコミ劇を笑うマスターへ、俺はもう一度頭を下げた。


「とりあえず今日帰ったらシフトについて相談します、こいつ……ミライも今はこんなですが、すぐ復帰すると思うんで」


「あぁ、待っているよ」


「ありがとうございます、マスターはこれから用事でも?」


「材料の買い出しと、野暮用が少しね。それよりアルスくん––––」


 発車する間際、マスターは頬を吊り上げた。


「校門に着いたら、一気に通り抜けることをオススメするよ」


 それだけ言い残し、車は環境に優しい加速で遠ざかっていった。

 どういうことだ……? ずいぶんと意味深なセリフに聞こえたが。


「ちょっとアルスくん、ミライさん! 話してる場合じゃないよ、急がないと!」


「ん? あぁすまない! ほらミライ行くぞ! 呑気に歩いてたらまた屋根を走らにゃならん!」


 ミライの手を引っ張りながら、常識の範囲内でダッシュ。

 やがて見えたのは久しぶりの校舎、制服姿の生徒たちが大勢登校している。


「よかった、間に合ったようだ……な?」


 俺は見た。

 視界いっぱいに広がる生徒たちが、機関銃のように一斉に視線を向けてきたのだ。


 俺が今までギルド時代に受けてきた軽蔑や侮蔑、それとは真反対のもの––––


「コミフェスを救った英雄が来たぞぉっ!!」


「表現の自由を守った戦士だっ!!」


「生徒会長に立候補するってホントですか!? ぜひインタビューをッ!!」


 男女問わず、湧き上がる歓声。

 さらにはメディア部までもが押し寄せてきた。


 マスターが言ってたのはこのことか!

 声を聞く限り、大手の報道機関が大々的に俺を報じでもしたのかもしらん。


 校内の隠れヲタや、一般生徒まで全部が焚き付けられている!

 いちいち構ってたら遅刻は免れない。


「『身体能力強化(ネフィリム)』!!」


 ミライとアリサを両腕に抱き抱え、生徒たちを一気に飛び越えた。


「ちょっ、アルスくん!?」


 顔を紅潮させたアリサが抗議してくる。


「いやホントすまんっ! だがこれも校則のためなんだ!」


「意味わかんないよ!?」


「俺もわからん!!」


 校門を飛び越えた俺たちは、忠告通り一気に校舎へ走り込んだ。


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