第23話・あなたの想いは確かに預かりました
俺は無差別爆破テロ犯を叩き伏せた。
足元では女テロリストが倒れている……。
かなり本気でぶん殴ったが、一応生きているだろう。
焼け落ちたテントまで歩くと、まだ意識のある警務官を見つけた。
全員重症だが、かろうじて生きているようだ。
その中の隊長であろう人物へ近づく。
「大丈夫ですか? たぶんすぐに救護班が来てくれると思います」
着ていた制服を脱ぎ、そのまま上着を破いて包帯代わりに止血。
応急処置だがこれで時間稼ぎができるだろう......。
「あぁ……すまない、一般人のきみに我々警務隊が遅れを取るとはな……」
「動かないでください、あなた方は不意打ちをくらったようなものなんですし、無理に責任を感じる必要は––––」
「そんな悠長に構えてられんよ、市民の安全を守るのが我々の責務だというのに……」
背後で爆発音が響いた。
コミフェス会場となっている宮殿、その屋根が一部吹き飛んでいたのだ。
マズイな……、案の定複数犯によるテロだ。
ミライやアリサの安否が気になる。
「テロリスト共はまだ複数いる……、すぐに向かわなければ……」
「ダメですよ! 見たところⅢ度の火傷です、安静にしていなければ今度こそ死にます」
「じゃあ誰が市民を守るんだ! 魔導士には纏まった戦力が必要だ、今会場にいる警備員では避難誘導が精一杯だろう……! 犠牲が増えてしまう」
クッソ、なまじ正義感が強い人はこういう時聞き分けが悪い!
こんな怪我で動けば戦う前に死ぬぞ。
俺はその警務官を落ち着かせようと、ダメ元で一つ頼み事をしてみる。
「だったら俺が行きます、瀕死の人間が行ったところで暴れる魔導士はどうにもできない。死体を増やすだけです」
「バカか……! いくらお前がさっきみたいに強くたって限度がある……、俺に行かせろ!!」
「嫌です! ここで言わなきゃあなたは死んででも動こうとするでしょう? 今すぐ首を縦に振らなければ、俺は救護班が来るまでずっと押さえつけていますよ」
「ッ!!」
表情を歪める警務官。
かなり長い––––と言っても時間にして数秒、長考した末に結論を出した。
「お前、杖もないんだろ? どうやって戦うんだ」
「さっきのようにぶん殴るだけです、俺は加減ができないので」
ため息をついた警務官は、腰のホルスターから震える手で“ハンドガン”を取り出した。
『M1911』。
オートマチックの最新ハンドガンで、シングルカラム式––––装弾数は8発。口径は9ミリ。
「……持ってけ! お前が下手な魔法でコミフェス会場を丸ごと吹っ飛ばすよりかはマシだ!!」
「そりゃそうですけど……、本当にいいんですか?」
「不味いだろうな、大前提として連中を片付けたら俺のところに持ってきてくれ。自分が撃ったことにするからよ……」
「無茶な作戦ですね……」
恐る恐る受け取ったハンドガンは、ズッシリと重かった。
まるで、動けないこの警務官の執念が宿っているような。
「使い方はわかるか?」
不安げに見つめる警務官の前で、俺はスライドを引いて初弾を薬室へ装填。
握り込みでグリップ・セーフティの感覚を確かめた。
「大丈夫、そうだな」
「あなたの想いと責務、確かに俺が預かりました」
「あぁ……悪いな、頼んだぜ」
そのまま意識を手放したのか、腕が地面へ落ちる。
俺は爆発音の轟く会場へ歩を進めた。
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