第20話・女装男子と推しカプ論争
「ヤッバ〜!! 超似合ってるじゃん、我ながらチョイスの良さに感激しちゃうよ〜」
「うんうん! マジで可愛いわよアルス!」
魔導カメラをバシャバシャと連写しながら、アリサとミライが黄色い歓声を上げる。
俺の格好は言うならば男子と正反対……、私服を取り上げられて、制服を着させられていた。
制服は制服でも、”女子生徒用の制服だ“。
「はあぁ〜、ホント可愛い、アルスさん黒髪系清楚美人って感じですよ! もういっそ女の子として生きていきましょうよ!」
アリサが顔面を紅潮させながら言う。
「ふざけるな、だいたいウィッグや映画撮影用の魔導具まで持ってくるなんて聞いてないぞ」
「まぁまぁアルス、せっかくだし鏡見てごらんなさいよ」
渡された手鏡を覗くと、そこには誰かもわからない可憐な少女が映っていた。
「誰これ?」
「誰ってアルスくんだよ? 黒髪ウィッグに女子制服着てるし、おまけにわたしが本気でメイクしてるからわかんないよ。最高の出来だよ?」
「いやいやいや! 俺男だから! 外見を女にされても需要ねーから!」
俺の全力否定に、ミライがかぶせた。
「いやアルス……今のアンタなら普通に萌えるわ、なんならアリサと百合カプ組ませてもいける」
「マジでやめろアホ! 写真撮んなっ、これ以上写すな!」
「バーロー、幼馴染が美少女に化けたんだからそりゃ撮るわよ。アルス×アリサの百合カプ……イケる」
「イケないよ!?」
暴走するミライの横で、カメラを少し下ろしながらアリサが叫んだ。
「ミライさん、それは違うと思う!!」」
「おぉ、よく言ってくれたアリサ! やっぱりお前はマトモ––––」
言おうとしたとき、彼女は顔を紅潮させながら続けた。
「わたしは逆がいい、アリサ×アルスだと解釈違いになっちゃう! なので正しくはアルス×アリサでお願いします!」
【推しカプ論争】。
それは古来より繰り広げられてきた過去があり、壮絶な戦争と言っても過言ではない。
「ああああアアアァァアアアアアアアアアァァアアアアアアアアアアアアアァァアアアァァアアアアアもおおおおぉぉぉおおおおおおおおおおっ!!!」
俺はその場から全力で逃げた、どれくらい全力かというと身体能力強化エンチャントを使って絶対追いつかれないようにするくらいだ。
まずはこのメイクを落としてウィッグを取る! 服装も元に戻す!
とりあえずトイレにさえ入ればこっちの、こっち……の……。
施設内トイレの前まで来た俺は、そこで立ち止まった。
そう、既に一般客が入場し始めていたのだ。
待て、今の俺はアリサのせいで見た目だけはまんま女子になっている。
男子トイレに入って通報されたらどうする? とても面倒なことになるだろうか。
いや、そもそも俺は男だ。通報されたところで問題はない、サッサとメイクを––––
「あの、入らないんですか?」
「ッ!!?」
突然後ろから話しかけられる。
振り向くとそこには、ショートヘアの金髪を下げた碧眼の少女がいた。
ミライやアリサと、十分張り合える美人だ。
どことなく、お嬢様のような雰囲気を醸し出している。
「あぁー……いやその」
声がうわずり高くなる。
「も、もちろん……は、入りますよ?」
「そうですか……良かったです、浮かない顔だったのでてっきり体調が悪いのかと。わたし、女の子が困ってたら放っておけないので」
ごめんなさい、俺男なんです。
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