第19話・コミックフェスタは極限世界、ヲタクたちの戦場なのです
––––『同人誌即売会』。
それは、あらゆるジャンルの2次創作が集まる我々ヲタクの祭典にして、仁義のない戦場である。
日本人と呼ばれる民族がだした出店をきっかけとして、現在まで長い歴史を誇る由緒正しい? イベントだ。
「さて、久しぶりだな……コミフェス!『神の矛』に入ってからはなかなか来れていなかったが、もはや俺を縛るものは何もない」
巨大な神殿を模した建物を前に、俺は私服で待機していた。
コミフェスは入場者数が膨大なので、本来ならクソ暑いなか並ばなければならない。
だが–––––
「あとはミライのやつが来るのを待つだけだ」
今回はサークル側での参加となるので、早々に入場が可能というわけである。
役得役得。
「おーい、アルスー!」
ミライの声が聞こえたので、パッと振り向く。
「おうミライ、おは……」
俺は絶句した。
服装は可愛い、初夏ということもあって露出も多く男としては目が釘付けになる。
なるのだが……。
「準備はできた? ここから先は戦場、一手のミスも許されない極限世界。さぁ行くよ」
眼が怖かった。
あれは本気の眼だ、戦場に向かう兵士と同じ眼をしてやがる……!
「と、とりあえず入るか、準備しないとな」
会場INした俺たちは、指定の場所でさっそく設営を始めた。
ミライが今回出すのは、女性向け有名マンガの2次創作。
いわゆるBLもの。
こないだ読ませてもらったが、彼女いわく原作への理解やリスペクトをしっかり取り入れたシナリオらしい。
画風はさすがに違うものの、キチンと読み物として見れるレベルで仕上がっていた。
まぁ半分くらい俺が手伝ったんですけどね!
「とりあえずこんなものか」
「そうね、はぁ……果たしてわたしが壁サークルになれるのはいつになるやら」
「ごめん、よくわからない」
ザッとだが、とりあえず完成。
あとは一般客の入場待ちなのだが––––
「おーい、アルスくーん! ミライさーん!」
聞き慣れた元気な声が響く。
見れば、銀髪のツインテールを下げた見たことのない女の子。
服装はナース服で、手には注射器を模した魔法杖が握られている。
あんなヤツ知り合いには––––
「ぴゃああぁぁぁあああああああああああああアアアアアアアアァァアァアアアアアァァァアアアアアッッッッ!!!! アリサちゃああああああんん!!」
断末魔のような絶叫をミライが上げた。
ん? え? もしかしてコイツがアリサか!?
いつもは髪型ツーサイドアップなのに、全然別人じゃねえか!
「いやー遅れてごめんなさい、ホントはもっと早く来たかったんだけどさ」
「可愛いっ! めっちゃ可愛い! それ今大人気のナース魔導士が主役のマンガコスだよね!? ヤダ超似合ってるじゃん……!!!」
「あはは、ありがとうミライさん。そうそう––––例のものちゃんと準備してきたよ」
おもむろに、俺へ袋を渡すアリサ。
ん? これって。
「さぁ早速更衣室へ行こうアルスくん! バッチリコスのサイズは合わせてきたから!」
「待て待て待てアリサ! 俺はこないだからコスプレするとは一言も––––」
「大丈夫! 一線超えて見ればすぐ吹っ切れるって、ねぇミライさん!」
「そうよアルス! 羞恥心はひと時だけ! 行った行った!」
「ばっ、ちょ……、お前らああぁぁぁぁぁッ!!!?」
俺は有無を言わさず、そのまま更衣室へ連行されていった。
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