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第15話・★タイムライン警備はほどほどにって、言いましたよね?★

 

「ミライのやつ……!」


 俺は木組みで出来た一軒家の前に立ち、制服に身を包みながら腕を組んでいた。

 手にはカバン、なにを隠そう......今日が俺の初登校日なのだ。


 なのだが––––


「一緒に登校しようと言った本人が、なんで寝坊してるんですかね?」


 玄関から出てきた制服姿のミライへ、俺は一言。

 クマ付きの顔目掛けて、さらに続ける。


「言え、徹夜で何をやってた?」


「ゆ、ユグドラシルのTL(タイムライン)を警備してまして……、絵師さんがエロいイラストたくさん上げててさ。つい気づいたら朝日が……」


「ふむふむ、あとは? それだけじゃないだろ?」


「ほら、ユグドラシルって10分系動画のほかに30秒メインのコンテンツもあるじゃん? 興に乗っちゃってつい……」


 指をいじくり回しながら、彼女は目を逸らす。


「ミライ、今何時かわかるか? 8時10分回ってますよ? このまま徒歩だと俺登校初日に遅刻するよ?」


「しょ、しょうがないじゃん! 嫁(推し)のイラストは一度見逃すと情報の海に呑まれちゃうんだよ!? もう二度と出会えないんだよ!? アンタに推しを求める気持ちがわかるの!?」


「純情ヒロイン振るんじゃねぇっ、もちろん俺もジャンルごとに推しがいる。アサルトライフルの擬人化イラストとか結構好きだし、気持ちは痛いほどわかる……だが」


 非常〜に苦しい言い訳をする彼女へ、俺は一言ぶつけた。


「今マジで論争する時間すらないんだわ……、俺ら」


「申し訳ございませえぇんッ!!!」


 ジャンピング土下座をかますミライを見ながら、俺はカバンを持ち直した。

 はてさてどうしたものか、マスターに車出してもらうか

 ……?


 いや、住み込みでバイトさせてもらってるのにそこまで無理は言いたくない。

 なら––––


「俺のカバン持てミライ」


「えっ? ここに来てわたし荷物持ち?」


「違う、今から歩いたんじゃ間に合わん! お前ごと担ぐ!」


「えっ!? うわあ!!」


身体能力強化(ネフィリム)』を発動。

 俺はミライを持ち上げると、屋根から屋根を高速で飛び移った。


「ちょっとアルス! 大丈夫なの!?」


「倫理観や常識についてか!? 悪いが今だけ無視してくれ!」


「違くて! 疲れないの!?」


「普通に疲れるわ! だが生徒会長を目指す人間が、初手遅刻なんてしたら格好がつかん!」


 警務隊に見つからないよう祈っていると、空中で声が掛けられた。


「あーっ! アルスくんじゃん!」


 横を見れば、俺と同じように屋根を飛び移る少女––––アリサ・イリインスキーの姿があった。

 彼女はこちらの横へつく、やはり身体能力が非常に高い様子である。


 高速で移動しながら、会話を続けた。


「おっはようアルスくん! あとミライさんだっけ? 2人知り合いだったんだ〜」


「あぁおはよう、っつーか、お前までなんでこんなことしてるんだよ?」


「昨日課題やる前に昼寝しちゃってさー、深夜までやってたら寝坊しちゃった。慌てて登校しようとしたら2人がいたんだよ」


 綺麗な銀髪が風になびいている。

 それを見たミライが、俺の胸の中でクスクスと笑った。


「へーっ、学園7位でも寝坊するんだ〜」


「てめーよかよっぽど健全だぞ」


「あっはは、仲良いね。あと5分––––どうせだし競争ね!」


 一気に加速するアリサ。

 いやこっち人間1人抱いてるんですけど!? あーもう! どうにでもなれっ!


 俺はさらに魔力を高め、ミライの絶叫を無視しながら学校へ向かった。



(イメージイラスト)。ミライ・ブラッドフォード。

王立魔法学園2年生、ヲタ活に全てを捧げる腐女子。


挿絵(By みてみん)

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