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第149話・ユリアVSキール国特殊部隊

 意気消沈のグランをかついで逃げ去るミライを、キール国特殊部隊長スホーイは追撃できなかった。


 眼前に立ちはだかる、最強格の魔人級魔導士が許すはずなどないからだ。


「貴様だな……ッ! 王立魔法学園の副会長とやらは」


 銃口を向けるスホーイに、ユリアは態度を崩さず武器を構えた。


「あら、ご存知だったんですね。ブラッドフォード書記のマネキンに騙されるような方々でも……それくらいはお見通しと」


「ッ!!」


 さっきつけられた傷に開幕で塩を塗り込まれ、スホーイは鬼の形相でユリアへ発砲した。

 音速を超えて飛翔した弾丸を––––


「ほッ!!」


 2刀短剣モードの宝具で、真っ二つに切り裂いてしまう。

 続く部下からの射撃も、ことごとくが防ぎきられた。


「化け物かよ……ッ」


「いいえ、経験値の差です。わたしは会長と戦った時からもうライフル弾による攻撃を受けているので」


 非殺傷弾とはいえ、あの日の公式戦でユリアはその身でもって実戦を行なっている。

 まずそこからして、キールとは前提が違った。


「上等だ、全員! 対魔導士近接機動戦用意!! なんとしてもぶち殺せ!!」


 ユリアは決して動じることなく、超高速で曇天が覆う空へ飛翔した。

 金色の流星を、10個の赤い光が追いかける。


「所詮子供と油断するな!! 確実に葬れッ!!」


「全員が『飛翔魔法(メテオール)』を使えるんですか。たしかに実力者のようですね」


 放たれる四方八方からのエンチャント付き銃弾を、ユリアはワイバーンも顔負けの機動で避けた。

 屋根を這うような低空飛行の末、ユリアは瓦を砕きながら着地した。


 スカートをなびかせながら、振り向き様に剣撃を振るう。


「ッ!!」


 追い縋っていた隊員が、先端部の銃剣でガードしようとするもたった一撃で砕かれた。


「バカなっ!?」


 否、当然であった。

 低質な加工の銃剣で、神の作りし宝具に勝るはずがない。


 ただただ驚愕する特殊部隊員。

 カバーに入ってきた別の2人が、高速でユリアの背後を取った。


「遅い、会長ならもう3回は殺せてます」


 2刀の短剣が合わさり、面積を増した。

 宝具はユリアの身の丈をも超える巨大ハンマーとなり、振り向きついでに後方の隊員を殴り飛ばした。


 吹っ飛んだ敵はそのまま民家へ叩きつけられ、地面へ延びた。


「包囲しろ!! 挟撃で倒せる女じゃない!!」


 同じ魔人級魔導士であるスホーイが、すぐさま指示を出す。

 4方向から囲むようにして銃剣を振るうが、ユリアにとっては造作もない。


 ハンマーを軸に真上へ飛び上がり、逆に回転しながら着地と同時に隊員を薙ぎ払ってしまった。


「ぐおぁッ!?」


「くそッ! 本国の教官ですらこんな動きしねーぞ!!」


 空中で体勢を整えるキール部隊へ、ユリアは表情を変えずに見上げる。


「いいことを教えてあげましょう、キールの特殊部隊さん」


 華奢な腕でハンマーを取り回しながら、ユリアは魔力をさらに上げる。


「たとえ同じ魔人級魔導士でも、そこには絶対的な壁というものが存在するんですよ」


「舐めやがって!! その口に銃口突っ込んで黙らせてやる!!」


 再び空中に飛び上がり、激しいドッグファイトを繰り広げる。

 だが、キールの攻撃はユリアに擦りもしなかった。


「とっておきを上げちゃいます!」


 宝具をハンマーから魔法杖に変えたユリアは、スホーイたちの直上へ昇った。

 とても追いつける速度ではない。


「星凱亜––––『金星煌爛雨(きんせいこうらんう)』!」


 曇天がバッと輝いたかと思えば、無数と言っていいほどの流星が降り注いできた。

 これはヤバい––––! スホーイはすぐさま回避機動を取る。


「ぜんぶ追尾弾かよ!!」


 回避しようとした部下が、銃撃された小鳥のように撃墜されていく。精鋭とされるキールの特殊部隊が……!

 学生ごときの分際で、ここまで強いなんて––––


「思ってませんでしたか?」


「ッ!!!」


 避けるのに必死で、スホーイはすぐ目の前にユリアが肉薄していたことへ気づかなかった。

 またも2刀短剣モードになった宝具を、彼は魔人級の意地に掛けて受け止める。


 激しい鍔迫り合いが発生した。


「アリサっちを処刑なんてさせません、今日は大人しく帰っていただけませんか?」


「っ……! 貴様が動いた理由がわからんな、裏切った親友を助ける動機などないはずだろう」


「えぇ、確かにアリサっちは嘘をつきました。けれどわたしもずっと子供じゃありません」


 眼前のスホーイと競り合いながらも、ユリアは追尾弾をコントロールし続けていた。


「もう許さない。ではなく––––ちゃんと許せる人間にわたしはなりたいと思った。ただそれだけです」


「気に食わん理由だ!! そんな簡単に心情が動いてたまるか!!!」


 より一層力を込めるスホーイへ、ユリアは凛々しい笑顔で「簡単ですよ」と言い放った。


「この世で“一番大好きな彼氏”に頼まれて、動かない女がどこにいるんです?」


 尋常ではないパワーで、銃ごと吹っ飛ばされるスホーイ。


「わたしはあの竜王級アルス・イージスフォードに、初めて最強たるブルーの変身を出させた人間ですよ?」


 さらに再び魔法杖モードにしたユリアが、魔力を纏った。


「残念ですが貴方では勝てません、わたし––––こう見えて天才ですので」


 吹っ飛んだスホーイに、残っていた『金星煌爛雨』が後ろから喰らいつくように連続で着弾した。

 屋根上に転がったスホーイは、未だ抵抗の意志を見せている。


「まだ……だっ!」


「いいえ、ここまでよっ」


 スホーイの銃を、蒼焔のムチが弾き飛ばした。

 彼を援護しようとした隊員たちも、全員が動けない。


 ––––周辺のあらゆる家屋や塔から、冒険者たちが魔法陣を向けていたのだ。


「さっすがユリア姉さん、まさか1人でここまでやっちゃうなんて」


『蒼焔竜の衣』を纏ったカレン・ポーツマスが、焔付きの剣をスホーイに突きつけた。


「我々はキルゾーンに……誘導されてたと、いうわけかッ!」


 全周を王国ギルド・ランキング1位、冒険者ギルド『ドラゴニア』に包囲され、キール国特殊部隊は降伏せざるを得なくなった。


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